オピニオン/研究

複雑・多様化する社会の構造的な課題を提起し、これからの高等教育のあるべき姿などを問い、課題解決の方法を提言していく。

【vol.1】「大学入試改革」の今後 ~東洋大学の展望~

学校法人東洋大学 アドミッション統括アドバイザー 加藤 建二氏 講演

加藤 建二 氏(学校法人東洋大学 アドミッション統括アドバイザー)

2026年5月に文部科学省が示した「年内入試」*への面接必須化方針は、高等教育界に大きな波紋を広げている。本稿では、長年にわたり東洋大学の入試改革を牽引してきた加藤建二(かとう・けんじ)氏が、転換期を迎えた大学入試の構造的課題を鋭く分析する。

大学教育の質保証と高大接続の在り方が問われる一方、私立大学入学者の約半数が学力試験を経ずに進学する現状への危機感を背景に、東洋大学が実践してきた「基礎学力を担保する入試」の成果とエビデンスを提示。さらに、高校現場の教育活動を阻害しかねない現在の選抜制度に対する大胆な私見を交えつつ、理想的な入試の在り方を提言する。

なお、本稿は2026年6月4日に開催されたNew Education Expo2026における加藤氏の講演を再構成したものである。

*年内入試:大学入学者選抜のうち、「学校推薦型選抜」や「総合型選抜」など、出願~合格発表までが年内(12月まで)に完結する入試方式の総称。

【目次】
【vol.1】
1.年内入試をめぐる動き

 ■ 2027年度以降は、年内入試の面接が必須に?/■ 東洋大学における年内入試への対応
 ■ 年内入試受験者の学力の担保は大学の個別対応に任されている
2.現在の大学入試が抱える課題
 ■ 高校・大学のポジションで変わる「求める資質」と「入試の形」/■ 大学のポジション別に見る入学者構成比
 ■ 私立大学で加速する年内入試へのシフト

【vol.2】
3.東洋大学の挑戦 ~入試改革のねらいと、改革の不断のあゆみ~

 ■ 基礎学力を担保する入試を目指して/■ 英語外部試験の利用で、大学が求める学生を獲得する
 ■ 文系学部の数学必須入試 ~合格ラインの調整によって志願者を集める~
 ■ 総合型選抜に基礎学力テスト型を導入した理由/■ 学力試験を課すことで、志願者・入学者の学力層も変化する/■ アドミッションポリシーに基づく多様な入試方式
4.入試改革の結果 ~改革を続けることで何が変わったのか~
 ■ 志願者の増加と多様化/■ 志願者・入学者の学力層が大きく変化する/■ 入試を変えることで「選ばれる大学」に
 ■ 大学入試が「勉強しない高校生」を増やすものであってはならない

[加藤氏]
私は2025年3月で東洋大学の入試部長を退任し、現在は学校法人東洋大学のアドミッション統括アドバイザーとして、総合的な立場から、幼稚園、中学校、高等学校、大学、大学院まで、法人全体のアドミッションに対し、助言や支援をしています。

昨年までは大学の入試部長という立場で、いろいろな責任もありましたが、今年はそのようなことがなくなりましたので、今日は個人的に思うところをお話ししようと思っております。そのため、今回の私の話は、あくまで個人の見解であり、東洋大学全体としての意見ではないことを、最初にご了承ください。


1.年内入試をめぐる動き

■ 2027年度以降は、年内入試の面接が必須に?

早速本題に入ります。つい先週、文部科学省から令和9(2027)年度大学入学者選抜実施要項が発表されました。そこでは「『年内入試』、つまり総合型選抜や学校推薦型選抜など、年内に合否を判定する入試方式では面接を必須とする」ことが示されています。ただし、すでに年内入試を導入している大学については、2年の移行期間を設けてよい、ということです。

この面接については、「AI面接ではダメなのか」など、さまざまな声が上がっていますが、要項上にはそうした具体的なことは書かれていません。ただし、昨年までのような、面接を行わない形式の入試ができなくなるのは確かです。なぜこのようなことになったのかについては、個人的に非常に疑問を感じています。

もともと年内入試の総合型選抜や学校推薦型選抜というのは、「丁寧な選抜を行う」ことが基本的な考え方です。本学では2025年度入試の際、学校推薦型選抜に基礎学力試験を課す「基礎学力テスト型」*を導入したことでひと騒動ありましたが、では、この「基礎学力テスト型」の入試が丁寧ではないということなのでしょうか。面接を入れたら丁寧な選抜になる、という考え方には違和感を覚えます。
*2026年度入試からは、総合型選抜・基礎学力テスト型入試

2026年度の本学の年内入試には、約2万人の受験生が集まりました。しかし、その規模で面接をするのは、物理的になかなか難しいものがあります。

先週、私は関西に出張し、関西の高校の先生方や大学関係者の方と情報交換をしてきましたが、面接必須化に対する受け止め方はさまざまなようです。その意味でも、関西の大学がどう動くかというのは、注目すべき部分かなと思います。


■ 東洋大学における年内入試への対応

東洋大学はここ十数年、入試改革の方針として「基礎学力をきちんと担保する入試」を掲げています。我々が目指す教育を実現するには、基礎学力は不可欠です。そのために必要な入試を、今まで構築してきました。

その中の1つに、昨年話題になった公募制・併願可の総合型選抜「基礎学力テスト型入試」があります。この方式は面接必須化まで2年の猶予期間がありますので、2027年度はもちろん今のまま継続します。ただし、書類選考や小論文の配点は、2026年度までは20点であったものを、50点に変更します。

その理由は、実際にこの2年間、基礎学力テスト型入試では出願時に調査書などの書類を提出していただいていますが、全体の学習成績の状況が良好な人、つまり出身校の中で頑張ってきた人は、大学に入学後もやはり頑張っている、というエビデンスがあるからです。そのため、大学として、この配点を少し上げて重視することにしよう、と考えました。

また、本学ではいろいろなタイプの学生に入学していただくべく、専願型の総合型選抜や学校推薦型選抜も実施してきました。そこでもさらに基礎学力を担保する方向にします。例えば、英語等の資格取得を出願条件に付したり、総合型選抜では出願資格に「学習証明型」を導入したりしています。「学習証明型」は、事前にオンラインで数学などの勉強をした上で、オンライン試験を受験していただき、合格した方に出願資格を与える、という形式です。

我々はこのように、基礎学力をきちんと身につけた上で入試を受けていただく、つまり「入試によって受験生を育てる」取り組みを行っています。また、指定校推薦も推薦基準を見直し、英語等の外部試験のスコアを出願時に提出してもらう、ということもしています。こういった方式の入試は、2027年度以降も続けていく予定です。

最初にお話しした年内入試の面接について、2028年度までの猶予期間以降どうするかということは、現時点ではまだ決めていません。今後、他大学の動きも当然ありますし、大学入学者選抜協議会の審議の内容もまだ定かではありませんので、そういった状況も見ながら、大学として検討していきたいと思っています。


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