
【vol.2】「大学入試改革」の今後 ~東洋大学の展望~
■ 大学入試が「勉強しない高校生」を増やすものであってはならない
最後に、昨年までは立場上なかなか言えなかったことをお話ししようと思います。あくまで個人的見解であり、東洋大学の見解ではないことをご了承ください。
本来、大学入試というのは、その大学が目指す教育を実現するために、それぞれ方針や方法を決めて実施するものだと思います。ただし、もちろん入試によって高校現場を荒らしてはいけません。
今、高校では探究活動が盛んに行なわれていますから、そういったものの成果を見る選抜があってもよいですし、私も否定はしません。実際に、本当にすばらしい探究活動をしている受験生も目にしています。しかし正直なところ、やはり大多数の高校生は、そこに至っているとは言えません。反対に言えば、高校の先生方だけで探究活動を進めていくことはかなり難しいです。そうなると、大学と連携をしていくという流れになりますが、高校生の指導は、大学の教員にとって負担が大きいため、なかなかうまくいっていない部分があると思います。
先ほどお話ししたように、私立大学入学者の約半数が、教科・科目の基礎学力を測られないまま大学に入学している、という実態があります。上位の大学では、志願者の学力がすでに担保されているので、総合型選抜を増やし、学力だけではなく個人の資質を測る入試を増やしていきたい、というのはわかります。
一方、中位校や下位校について考えてみると、大学として教育の質を担保し、高めるために、本当は下位校ほど学力試験が必要なはずですが、実態はほとんど行われていません。個人的には、ここが一番問題ではないかと思います。
東洋大学の中で見ていると、学力試験を受けていない入学者は、高校卒業程度の学力が身についていないことが往々にしてあります。その点をカバーすべく、大学が入学前教育を行っているのですが、それは本来、高校で身に付けておくべき内容なのですね。入学前教育は、もともと大学教育の前段階としてやるべきものであるはずが、今や大学が高校の肩代わりをしています。それはおかしいと思っています。
今からお話しするのは、少々飛躍した案です。
高校は、現在12月まで授業をしているはずなので、共通テストは1月に実施しています。そして、年内入試で学力試験を行なってはいけないのは、まだ教科書が全部終わっていないから、というのが理由とされています。では、なぜ総合型選抜と学校推薦型選抜を年内に実施するかといえば、「丁寧な試験をするので時間がかかるから」という理由なのですね。
ここで、「丁寧な試験」が求められる年内入試において、なぜ学力試験を行なってはいけないのかを改めて考えたとき、これはかなりうがった見方ですが、一般選抜での合格がなかなか難しい生徒は当然いるので、そういう生徒については、学力とは違う面を見てもらって、早めに進学先を決めてしまいたい、という高校や受験生側の思惑もあるのではないか、それが今は、やや行き過ぎた状態になっているのではないかと思います。
ですから、個人的には思い切って年内入試を廃止して、総合型選抜と学校推薦型選抜も、一般選抜と同時期の1月か、それ以降に実施すればよいと思っています。そうなれば、やり方も公平ですし、高校の現場を邪魔せずに済みます。
また、現在の総合型選抜や学校推薦型選抜が、高校教育を阻害している面があるのも事実です。指定校推薦は9月の校内選考が終わった段階で実質合格が決まります。そうなると、その生徒は卒業まで勉強しないまま大学に入学してしまうので、到底大学の勉強についていけるはずがありません。それを皆がわかっているのに、なぜか誰も、何も言わないのです。
ですから、そこはやはり一般選抜の学生と同じように、12月まできちんと高校で勉強して、試験は1月以降に実施する方が、皆にとってよいのではないかと本心から思っています。もしくは、かなり乱暴ですが、全員が3月まで高校生活をきちんと送って、入試はすべて4月以降に実施し、入学は9月にする、というのも1つのやり方と思います。
そうした議論もないまま、現在、「年内入試には面接を入れなさい」という話になっているわけですが、では、面接を入れたら選抜が丁寧になるのでしょうか。感覚的に、よくわからないです。
なお、もう1つ考えられることとしては、「学びの基礎診断」のような基礎学力を測る試験を復活させることで、年内入試の受験生の学力を何らかの形で担保できるようにする仕組みを全国的に作る方法が挙げられます。
大学入試の変化は、当然高校に大きな影響を与えます。現状の大学入試は、勉強しない高校生を増やす方向に動いているので、このままの状態は絶対によくないと思います。私は本当に日本の将来が心配です。この高校生たちが、勉強しないまま社会に出て、皆さんの大学や会社に入って来ることを考えると、皆できちんと考えて、今のうちに何とかしなければいけないのではないかと思います。
大事なのは、大学入試が「勉強しない高校生」を増やすものであってはならない、ということです。日本の将来のためにも、高校生全体の底上げを意識した大学入試であるべきだと強く思っています。

[Profile]
加藤 建二 氏
学校法人東洋大学 アドミッション統括アドバイザー
2013年以降、14年にわたり東洋大学入試部長を務め、他大学に先駆けた紙の大学案内廃止や一般選抜での英語民間試験利用等を主導。入試改革のフロントランナーと呼ばれる。
2026年4月から現職。附属幼稚園から大学・大学院までを対象に、総合的な見地から施策の助言・支援等を行う。東洋大学OB。講演、執筆多数。
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記事:小松原 潤子(KEIHER Online 編集委員)
編集:山口 夏奈(KEI大学経営総研 研究員)


