オピニオン/研究

複雑・多様化する社会の構造的な課題を提起し、これからの高等教育のあるべき姿などを問い、課題解決の方法を提言していく。

【vol.1】「大学入試改革」の今後 ~東洋大学の展望~

■ 私立大学で加速する年内入試へのシフト

具体的な数字を見ていくと、私立大学における年内入試での入学者は、全私大入学者の61.7%に上ります。その内訳としては、学校推薦型選抜が多くありますが(全私大入学者の約4割)、そのほとんどが指定校推薦です。 他方、総合型選抜の入学者は、実はそれほど多くありません。反対に言えば、総合型で難度の高い試験をすればするほど志願者は集まらないので、大学としては指定校推薦が一番学生を獲得しやすいのです。一方高校側も、指定校推薦が一番生徒を送り出しやすく、そこの利害が一致しています。ゆえに、このような流れになるわけです。

さらに、文部科学省の調査で、総合型選抜と学校推薦型選抜で学力試験を課していないものがどのくらいあるか、というデータがあったので、少し乱暴ですが、それに今の数字を掛けてみました。

すると、実態として、私立大入学者の半分が、学力試験を経ずに大学へ入学している可能性が見えてきます。私は、これが一番問題であると思います。そしてこの割合は、おそらく来年・再来年はもっと増える可能性があるので、これは何とかしなければいけないと考えています。


下のスライド12は、いま、高校生が教科・科目の勉強をあまりしてないという実態を示したものです。全体として大学全入時代があり、文科省による入試改革が行われてきた中で、大学側は年内入試にシフトしてきました。上位大学は別として、それ以外の大学は、年内で入学者を確保する、という流れになったのです。

また、保護者もやはり、なるべく早く子どもの進学先を決めたいのです。保護者の方にお話を聞くと、よく「お正月を受験生の親として過ごしたくない」とおっしゃいます。「レベルを多少落としても、指定校推薦があるのならそれでいいじゃない」と子どもに言うようです。

一方、高校の先生方としては、それをどうにかしたいけれども、親御さんに言われるとそれ以上は何も言えないので、結果的に指定校推薦で決まっていく、というパターンだそうです。加えて、高校の進学実績を高めたいというニーズもあります。一般選抜で受験した生徒が浪人してしまうと実績になりません。そのため、一般選抜で合格できる可能性が低い生徒は、年内入試で進学先を決めることが多いです。そのあたりのニーズがすべて合致してしまうので、年内入試が増えていくのは必然かと思います。

そしてこれにより、早期に進学先が確定し、その後は勉強をしない高校生が増加しているのです。私はこのことを懸念しています。高校でお話を聞いても、特に進路多様校の先生方からは、「そこが一番問題だ」という声をよく聞きます。


実際、社会や時代の要請によって、大学入試も大きく変わってきています。また、社会で必要な人材も、これからどんどん変わっていきます。理工系人材や情報系人材の不足が叫ばれる中で、各大学では補助金をもらい、文系の定員を減らして、いわゆる「デジタル・グリーン」と言われる理系学部を作ることが進んでいます。ここ3年くらいで、約3分の1の大学がその申請をしているので、何年か後には、理系の募集が一気に増えることでしょう。

さらに、今後はプログラミングや数学、統計を誰もが普通に使うようになるので、文系でも数学が必要な時代になってきています。また、2026年4月に、財務省から「今後15年で、私立大学の4割を削減」という話も出ましたので、これでは母校がなくなるのではないか、と思っている方も結構いらっしゃいます。こうした状況による変化が、今起こっているわけです。


[Profile]
加藤 建二 氏
学校法人東洋大学 アドミッション統括アドバイザー
2013年以降、14年にわたり東洋大学入試部長を務め、他大学に先駆けた紙の大学案内廃止や一般選抜での英語民間試験利用等を主導。入試改革のフロントランナーと呼ばれる。
2026年4月から現職。附属幼稚園から大学・大学院までを対象に、総合的な見地から施策の助言・支援等を行う。東洋大学OB。講演、執筆多数。


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記事:小松原 潤子(KEIHER Online 編集委員)
編集:山口 夏奈(KEI大学経営総研 研究員)

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