オピニオン/研究

複雑・多様化する社会の構造的な課題を提起し、これからの高等教育のあるべき姿などを問い、課題解決の方法を提言していく。

【vol.1】「大学入試改革」の今後 ~東洋大学の展望~

2.現在の大学入試が抱える課題

■ 高校・大学のポジションで変わる「求める資質」と「入試の形」

私はここ十数年、入試の分析を行ってきました。スライド9は、「高校の進学状況は具体的にどうなっているのか」について、高校と大学を学力上位、中位、下位の3つに分け、それぞれが今どのような状況にあるかを図にしてみたものです。ここに書いた表現に問題がないわけではありませんが、わかりやすい一般論として聞いていただければと思います。


学力上位の高校は、大部分の生徒が教科・科目の勉強をきちんとして、一般選抜で学力上位大学を目指します。年内入試を利用する人ももちろんいますが、そういう人は、例えば探究ですばらしい成果を挙げたような人が多く、これは少し特殊なケースです。

そして、学力上位の大学は、一般選抜での入学者が多いので、基本的に基礎学力は十分身についていると考えられます。そこで基礎学力に加えて、いわゆる探究など別の力を持っている学生がほしい、ということになります。上位大学の中には、「今後はすべて総合型選抜にしていきたい」と発表している大学もありますが、それはおそらく、総合型で入学した学生が入学後に一番伸びているからでしょう。これは納得できるところです。

学力中位の高校は、主に年内入試で大学に進学します。私立大学における年内入試での入学者の割合は、全体で約6割ですが、指定校推薦などを利用してより上位の大学に入る、という流れになっています。

一方、学力中位の大学(本学もここに入ると思います)は、一般選抜の入学者の基礎学力は担保できているものの、年内入試の入学者の基礎学力不足が顕著です。本学の場合、4月に新入生全員に対して英語の試験を実施しますが、平均点で見ると、年内入試の学生と一般選抜の学生では100点以上違います。そのため、学力中位の大学としては、基礎学力を持った学生がほしいので、なるべく一般選抜で入学者を獲得したい、というのが本音ではないでしょうか。

そして、この言い方でよいのかはわかりませんが、学力下位の高校(いわゆる進路多様校)では、進学する人の約90%が指定校推薦などの年内入試を利用しており、一般選抜を受験する生徒はほぼいません。

また、学力下位の大学では、一般選抜の場合、合格者を定員より相当多く出しても、実際の入学にはつながらない状態が続いています。そこで、年内入試で何とか入学者を確保しようと、指定校推薦をたくさん出しているわけです。


■ 大学のポジション別に見る入学者構成比

このように、大学も高校も、入試は「一律にこうなっている」と言えないのが現状です。下のスライド10のグラフは、学力上位・中位・下位の大学の、入試方式別の入学者の構成比を示しています。A大学は、東京のトップ大学です。一般選抜入学者の割合は約6割で、あとは指定校推薦や総合型選抜です。これが上位大学における入学者構成の一般的なパターンだと思います。

東洋大学は、中位大学にあたりますが、一般選抜が45.7%で、学校推薦公募が15.9%です。これは2025年度入試の結果なので、この学校推薦公募というのが、例の基礎学力テスト型に該当します。そのため、本学は学力を測るかたちの試験で、入学者の約6割を確保していることになります。

一方、総合型選抜の入学者の割合は小さいです。本学の場合、総合型選抜は、一般選抜ではなかなか学力的に難しく、指定校推薦も取れなかった人が何とかワンチャンスを狙って受験しているケースが多いため、そこではあまり積極的に学生を採りたくはない、ということがあります。

一番下は、いわゆる偏差値が40以下の大学です。こういった大学は、一般選抜では入学者の確保が困難なので、指定校推薦をいわば「ばらまく」かたちになります。これが進んでいくと、今度は指定校推薦でも学生が来なくなってしまい、そうなると総合型で採るしかない、という流れになっていきます。

このように、いろいろな大学の例を見ていくと、その大学が、今どの位置にいるのかがはっきりとわかります。さらに、どの大学もおよそ同じような動きをするので、大学側の考え方として、指定校推薦で採るしかない、総合型選抜で採るしかないといった流れで、年内入試が加速するのはある程度仕方がないと思います。


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