
奈良女子大学 高田 将志学長インタビュー[後編] -女子大初の工学部がもたらした新たな風と、社会で輝く「質実剛健」な女性たち-
2022年、奈良女子大学は女子大として初めて工学部を開設。その新たな「看板」は、産業界との連携を大きく加速させ、大学の追い風となった。学生の間でも、これまで以上の「多様性」が生まれているという。このほか後編では、社会で活躍するリーダーを数多く輩出してきた奈良女子大の、そこで育まれる学生気質に迫る。さらに、高田学長の専門である地形学の視点から語られる地理学独自のディシプリンには、社会に活き、社会と生きる学問の姿を見た。
奈良女子大学 高田 将志学長インタビュー[後編]
-女子大初の工学部がもたらした新たな風と、社会で輝く「質実剛健」な女性たち- 【独自記事】
【目次】
■ 工学部が加速させた産業界との連携
■ 工学部で生まれる「多様性」
■ 堅実に自身の道を歩む 奈良女子大生の「質実剛健」
■ 「何でも地理」こそ魅力 高田学長に聞く、地理学の特長と面白さ
■ コラム①:「地形を見る専門家」であること
■ 活断層研究に見る地理学独自のディシプリン
■ コラム②:本の世界と研究と、好奇心とユーモアと
■ 工学部が加速させた産業界との連携
――貴学は2022年4月に女子大として初めて工学部を設置され、2026年度で開設5年目を迎えました。先ほど、「女子大の工学部だから入学した」といった学生の声もあるとうかがいましたが、大学の運営・経営の視点から、工学部が大学にもたらした変化やメリットにはどのようなものがありましたか。
工学部の設置に伴い、産業界との連携は非常に活発化しました。これまでも理学部や生活環境学部を中心に企業との連携はありましたが、大学全体として、そこに手を回し切れていなかったのも事実です。それが工学部の開設を機に、共同研究はもちろん、企業と連携した教育プログラムなども数多く実施できるようになりました。企業からのご寄付も増加しています。
中でも、奈良に拠点を置くDMG森精機株式会社様(以下、森精機様)には、多大なサポートをいただいています。森精機様は、かねてより本学の教育にご協力くださっていましたが、2022年3月、工学部の設置に先立ち、本学と同社との間で包括協定を結んだことにより、従前以上のご支援をいただけるようになりました。工学部専門科目への講師派遣やマシニングセンタ技術を活用したカリキュラムの考案、同社が所有する施設や工場等における実習機会の提供など、本学の教育をさまざまなかたちでサポートしてくださっています。
包括協定は、森精機様のほか、ソニー株式会社様、京都機械工具株式会社様などとも締結しています。ほかにも複数の企業様が本学の教育にご協力くださっており、工学部の設置がこうした産業界との連携を加速させたと感じています。
・奈良女子大学工学部|企業・地域連携
・奈良女子大学工学部|包括協定の締結 -DMG森精機(株)
・DMG森精機株式会社|プレスリリース|女性工学系人材の育成支援 国立大学法人奈良女子大学と包括協定を締結
また、同じく2022年に、奈良国立大学機構として「ネーミングライツ制度」を導入しました。本制度は、将来にわたる新たな財源の確保と自己収入の拡大促進を目的に、大学の教育環境の向上や、施設の整備・有効活用を図るものです。ネーミングライツを取得した事業者には本機構が所有する施設等の命名権が与えられ、事業者名の表示や看板等の設置が認められます。
例えば森精機様は、主として工学部が利用する研究棟のネーミングライツを取得されており、契約期間中、同棟には「DMG MORI棟(工学系H棟)」の名が掲出されます。ほかにも、住友重機械工業株式会社様やダイダン株式会社様などからも、ネーミングライツを通してご支援をいただいています。こうした表示があると、学生は企業名を自然と目にするようになるため、企業の人材募集戦略としてはもちろん、学生にとっても進路の可能性を拡げるきっかけの一つとなるでしょう。


ネーミングライツを取得した事業者の例 ①(写真左:DMG MORI棟 エントランス_DMG森精機株式会社)
ネーミングライツを取得した事業者の例 ②(写真右:SHI Café Dear deer! 外観_住友重機械工業株式会社)

ネーミングライツを取得した事業者の例 ③(S235大講義室入口_ダイダン株式会社)
(画像出典:国立大学法人 奈良国立大学機構ホームページ)
■ 工学部で生まれる「多様性」
――学生の様子についても、ぜひ教えてください。
現在、本学の工学部には、学部入試での入学者のほか、高等専門学校(以下「高専」)出身の編入学生も一定数在籍しています。そうした学生はとても「面白い」存在です。
一般的に高専生には男性が多く、女性は少数派です。そうした環境で高度かつ専門的に工学を学んできた学生は、女子大の工学部で2年間学んできた学生とは、やはり少し違った視点や感性を持っています。彼女らと在学生との出会いは、互いに良い刺激となっていることでしょう。多様性に溢れた、ユニークな環境が醸成されているように感じています。
――良い化学反応が起きていらっしゃるのですね。
そうですね。実際に工学部の先生方からも、そのような話をうかがっています。
――2026年3月には工学部第1期生が卒業を迎えますが、進学者はどの程度いらっしゃるのでしょうか。
工学部第1期生は、そのおよそ7割(34名)が大学院に進学予定です(2026年2月時点)。
――工学系分野における女性人材の輩出が期待されます。
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