関西国際大学・濱名篤学長インタビュー 「偏差値」から「教育の質」へのパラダイムシフト

過去は変えられないが、未来は変えられる:「偏差値」から「教育の質」へのパラダイムシフト――関西国際大学・濱名篤学長が描く、大学再生へのグランドデザイン

18歳人口の急減、定員割れ大学の増加――。日本の大学を取り巻く経営環境は、かつてないほどの厳しさを増している。他方、進学希望者にとっては、「どこかの大学には必ず入れる」=「大学全入」時代となり、選択肢が広がってきているのも事実だ。偏差値という長年信奉されてきたモノサシは、もはや大学そのもののブランドとイコールではなくなり、大学は、その存在意義の再定義が求められるようになった。大学は、「入学者の学力(偏差値)」ではなく、「卒業時にいかなる力を身につけさせたか」という付加価値によって評価されるようになってきているのだ。

このような時代の趨勢にあって、独自の教学改革と経営戦略で異彩を放つ大学がある。兵庫県に本拠を置く関西国際大学だ。2020年の法人合併を経て、現在では兵庫県内に3キャンパス6学部を備える大学となり、国内外に100を超える提携校を有している。大学名にある「国際」の名にもふさわしく、同大のグローバル学部の留学生比率は4割を超え、留学生向け入試の倍率が10倍に達する学科もある。2024年には、その春の卒業生(留学生)におけるビザ取得率は、全国平均を遥かに凌駕する「75.%」を記録するなど、大きな躍進を遂げている。

文部科学省による「全国学生調査(第4回試行実施)」の結果として公表された「ポジティブリスト」においても、同大は「成長実感」や「教え方の工夫」といった項目で全国トップクラスの評価を獲得した。

なぜ、関西国際大学は、これほどまでに学生の成長を引き出し、確かな実績を残すまでの発展を遂げたのか。その背景には、2007年の学位授与方針(ディプロマ・ポリシー=DP)公表以来、四半世紀近くにわたって磨き上げられてきた、日本屈指のIR(インスティチューショナル・リサーチ)と、それに基づいた「教学マネジメント」の徹底的な実践がある。

今回は、関西国際大学の濱名篤学長にロングインタビューを敢行。法人合併という荒波を乗り越えたリーダーシップ、偏差値偏重社会への痛烈なアンチテーゼ、そして「スープの冷める距離」で連携するという独自の大学間ネットワーク構想まで、日本の大学が発展していくための方向性を聞いた。

【目次】
1.エビデンスが語る教育力――ポジティブリスト全国上位の背景
2.「過去は変えられないが、未来は変えられる」――法人合併の思想的統合
3.「ユニバーサル・グローバル」という戦略:出口までを設計する
4.IRの真髄――“点”ではなく“線”で学生を追う
5.学びの可視化とラーニング・コミュニティ
6.大学入試は「選抜の時代」から「マッチングの時代」へ
7.スープの冷める距離での大学連携――大学は「共同体」で生き残る
8.これからの国際化/大学教育でのAI活用について
9.教育関係者や受験生に伝えたいこと


1.エビデンスが語る教育力――ポジティブリスト全国上位の背景

――まずは、文部科学省が公表した「全国学生調査」の結果について伺います。貴学は国際コミュニケーション学部が「成長実感」で人文分野全国2位、社会学部も複数項目で上位に入るなど、極めて高い評価を得ました。この結果をどう受け止めておられますか。

濱名篤学長(以下、濱名): 率直に申し上げれば、驚きはありませんでした。むしろ、「ようやく時代が、我々が長年積み上げてきたエビデンスに追いついてきた」という感覚に近いですね。

これまで、日本における大学への評価は、偏差値や教員一人あたりの論文数といった、いわば、その大学が持つリソース(資源・人材)と、入学者の入学時点の学力(偏差値など)に偏重していました。しかし、今回のポジティブリストは、実際に学生がどう感じ、どう成長したかという「教育のアウトカム(成果)」に光を当てたものです。

令和6年度「全国学生調査(第4回試行実施)」ポジティブリスト

https://www.mext.go.jp/content/20250930-koutou02-000001987_2.pdf

特に注目していただきたいのは、本学の特定の学部だけが高評価なのではなく、分野横断的に高い評価が出ている点です。例えば、本学の国際コミュニケーション学部は、学生の「成長実感(Q27)」で3.491(4点満点)という極めて高いスコアを得て、人文分野で全国2位にランクインしましたが、社会学部も社会分野において、「教え方の工夫(Q4)」で全国3位(3.382)、「成長実感(Q27)」で全国4位(3.441)と、軒並みトップクラスに名を連ねています。

この結果は、本学が長年磨き上げてきた全学的な教育システムが、組織として正しく機能していることの証明と言えるでしょう。。

我々は、「学修支援システム」や、「KUISs学修ベンチマーク」といった教育のインフラ(https://www.kuins.ac.jp/about/info/ir/data/kuissBM2023.html)を20年以上かけて構築してきましたが、これらが組織全体として機能している。どの学部の学生であっても、等しく質の高い教育プロセスを経ていることの証明だと自負しています。これは偶然の産物ではなく、狙って出した結果なのです。

(次ページへ続く)

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