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高等教育関連の新刊書を中心に、さまざまなジャンルの書籍を紹介するコーナー

『教育と政治を編み直す 規範的教育学の再構築』 髙宮正貴・市川秀之・杉田浩崇 編著 (勁草書房刊)

■本の内容

教育と政治の関係とは何か、「正義」「生政治」「人間形成」の3つの視点から理論的に問い直し、教育哲学と政治理論の架橋を目指す。
本書は、教育の規範をどのように導き出すことができるのかということについて、規範的政治理論と教育哲学を接合させる可能性を探る。一方、規範を提示すること自体が生権力になりうるのではないかという問題意識から、規範のもつ権力性を問い直し、批判するための視座として、生政治論を援用し教育の権力性について考察する。


■編著者:

髙宮正貴(たかみや まさき):
大阪体育大学教育学部教授。上智大学大学院総合人間科学研究科博士後期課程修了。博士(教育学)。主な業績:『価値観を広げる道徳授業づくり:教材の価値分析で発問力を高める』(単著、北大路書房、2020年)、『J.S. ミルの教育思想:自由と平等はいかにして両立するのか』(単著、世織書房、2021年)、『道徳的判断力を育む授業づくり:多面的・多角的な教材の読み方と発問』(共著、北大路書房、2022年)。

市川秀之(いちかわ ひでゆき):
千葉大学教育学部准教授。名古屋大学大学院教育発達科学研究科博士後期課程単位取得満期退学。博士(教育学)。主な業績:『政治において正しいとはどういうことか:ポスト基礎付け主義と規範の行方』(分担執筆、勁草書房、2019年)、A Theory of Hopein Critical Pedagogy: An Interpretation of Henry Giroux(Educational Philosophy and Theory, 54 (4), 2022)、『共在に留まる教育者:マイケル・ハートとアントニオ・ネグリの〈共〉概念に基づく教育者の役割の検討』(『教育哲学研究』第128号、2023年)。

杉田浩崇(すぎた ひろたか):
広島大学大学院人間社会科学研究科准教授。広島大学大学院教育学研究科博士後期課程修了。博士(教育学)。主な業績:『子どもの〈内面〉とは何か:言語ゲームから見た他者理解とコミュニケーション』(単著、春風社、2017年)、『「エビデンスに基づく教育」の閾を探る:教育学における規範と事実をめぐって』(共編著、春風社、2019年)、『情報技術社会における統治性に接ぎ木されない主体像:ポストヒューマン的社会状況における『人間であること』を論じるために』『教育学年報13 情報技術・AIと教育』(分担執筆、世織書房、2022年)。

■目次:

序章 教育と政治を編み直す[髙宮正貴・杉田浩崇・市川秀之]
 一 教育学と政治学をつなぐ意義
 二 正義という問題領域
 三 生政治という問題領域
 四 人間形成という問題領域

第Ⅰ部 正義

第一章 現代リベラリズムは教育制度・政策にいかなる規範を提示しうるか――ブリッグハウス/スウィフトの教育の正義論からの考察[児島博紀]
 一 はじめに
 二 〈教育の平等〉の擁護
 三 リベラルな〈家族の価値〉論
 四 教育制度・政策への規範的なアプローチとは何か
 五 おわりに

第二章 国民の責務としての公教育――教育の平等から教育の正義へ[髙宮正貴]
 一 問題の所在
 二 ブリッグハウスらによる三つの原理とその問題点
 三 アンダーソンの関係的平等主義と教育の正義
 四 オニールのカント主義的構成主義に基づく三つの原理
 五 教育政策に対する含意――むすびに代えて

第三章 教育のグローバルな正義と運命愛――他者の善き生への関与はいかに根拠づけられるか[橋本憲幸]
 一 世界の教育現実を前に理論に何ができるか――問題設定
 二 それでも人生にイエスと言う――運命愛
 三 人生にイエスと言う他者に何もしなくてよいわけではない――グローバルな正義
 四 他者の善き生に関与してもよいのはなぜか
 五 SDG4でも運命愛でもなく正義から他者の善き生に関与する――結論

第四章 教育の正義とプラグマティズムの射程――教育政策、カリキュラム、可謬主義[生澤繁樹]
 一 はじめに
 二 教育政策の〈正しさ〉とは何か――政策の混迷と迷走のなかで
 三 教育政策の〈正しさ〉の再考――予備的考察
 四 政策探究の哲学としてのプラグマティズムの射程
 五 おわりに

第Ⅱ部 生政治

第五章 「教育」と「政治」をどのように編み直すか――「近代的主体」でもなく、「エージェンシー」でもなく[室井麗子]
 一 近代における教育と政治の接合・交差――「近代的主体ならざる存在」の可視化と「近代的主体」の育成という課題
 二 「近代的主体」形成の実践 ― 市民性教育ならびに主権者教育
 三 Education2030プロジェクトと自由主義的統治
 四 教育と政治をどのように編み直すか――困難さ、不可能性、葛藤、ジレンマに留まる

第六章 権力のメカニズムとしての楽観性――情動的な執着の効果[虎岩朋加]
 一 はじめに
 二 情動的転回
 三 「残酷な楽観性」
 四 楽観性との多様な関係
 五 おわりに

第七章 ジャック・デリダと〈不可能な歓待〉の場としての学校[平石晃樹]
 一 はじめに
 二 歓待というアポリア
 三 二つの歓待のあいだで
 四 「他なるものの家でわが家にいること」
 五 おわりに

第八章 利益(interests)の生政治――包摂/排除の境界事例としての「重度障害児」をめぐって[杉田浩崇]
 一 はじめに
 二 子どもの権利論と「利益」
 三 生命倫理学における「利益」
 四 統治の原理としての「利益」――生政治の展開
 五 「利益」のオルタナティブに向けて――「あいだにあること」の意義
 六 おわりにかえて――びわこ学園の事例から

第九章 遺伝子改造とアイデンティティ[森岡次郎]
 一 はじめに
 二 『人間園の規則』(Regeln fur den Menschenpark)
 三 『人間の将来とバイオエシックス』(Die Zukunft der menschlichen Natur)
 四 おわりに――問いを引き受け直すために

第Ⅲ部 人間形成

第一〇章 子どもと接するように政治を営む――ケアの倫理から考える「政治の教育化」[市川秀之]
 一 ケア、政治、教育
 二 人間形成と絡み合う政治
 三 「政治の教育化」の内実
 四 結論と課題

第一一章 「「である」ことと「する」こと」考――丸山眞男の存在論と人間形成観[関根宏朗]
 一 はじめに
 二 「「である」ことと「する」こと」の論理
 三 教材としての「「である」ことと「する」こと」
 四 「「である」ことと「する」こと」にみる丸山の「教育」的意図
 五 おわりにかえて――丸山眞男の存在論と人間形成観

第一二章 「教え」の復権をめぐる教育と政治[田中智輝]
 一 はじめに――「教え」をめぐる困難
 二 ランシエールにおける「教え」概念――政治的指導者論から教師論へ
 三 「無知な教師」の教師性
 四 「教え」のスペクタクル性
 五 おわりに

第一三章 主体形成論として読むウィリアム・E・コノリー――エージェンシーをめぐる問題系[岸本智典]
 一 コノリー政治哲学の位置づけと教育学へのインパクト
 二 コノリー思想における主体形成への視座
 三 コノリーの主体形成論への評価とその教育学的射程

第一四章 民主教育論の再検討――「生き方の様式」に照らして[鵜海未祐子]
 一 はじめに
 二 民主教育論/「生き方の様式」デモクラシー
 三 ガットマンの民主教育論におけるアイデンティティ論
 四 デューイによる「生き方の様式」デモクラシーにみるエージェントの質的な生成論
 五 おわりに

終章 規範的教育学の再構築に向けて[杉田浩崇]
 一 各章をふりかえって
 二 三つの問題領域の交差点――今後の展望を見すえて

あとがき
索引


定価 5,280円(税込)
刊行日 2026年3月16日

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