
CBTの可能性と教育的エビデンス -全国学力・学習状況調査と入学者選抜の挑戦-【vol.1】
2.電気通信大学のCBT入試 -ペーパーテストでは測れない能力を精度高く評価するCBT-
電気通信大学大学院 情報理工学研究科教授 植野 真臣 氏

植野 真臣 氏(電気通信大学大学院 情報理工学研究科教授)
■ CBT入試導入の理由
私は、DNCの有識者会議や、CBT入試を検討する委員会に関わってきました。電気通信大学のCBT入試は、この成果を継続して、電気通信大学とDNCの共同プロジェクトで、文部科学省の委託事業という形で始まったものです。
本学のCBT入試の実施は、依頼があってから1か月ほどで決めたことでした。ただし、国からの委託事業と言っても、実際の入試にCBTを導入するということは、大学にとって非常に大きな決断でした。当時は、学長も先生方も本部の事務方の皆さんも、そもそもCBTとはどのようなものか、ということさえご存知なかったのです。
「なぜCBTで入試を実施するのか」その理由について、当時私が説明させていただいたのは、今までどおりのテストでは、一般的な学力とは異なる力、AIに負けない能力を測り切れなくなる、ということです。AI時代になると、従来のテストの方式自体が古くなるのですね。そして、子どもの数が少なくなると、旧来の試験では、特に合否ラインぎりぎりの人たちの学力が保証できなくなる可能性があります。
そこで、2月以降に実施する一般選抜はそのままとし、総合型選抜や学校推薦型選抜にCBTを導入してはどうか、と提案しました。
本学の総合型選抜は9月に実施しますが、9月に試験を行ってしまうと、試験時期が早すぎて学生の能力が十分な精度で予測できないという問題がありました。また、従来の総合型選抜は、実質的に面接だけで評価していたので、入学した学生は(おそらくある種の光るものは持っていたのでしょうけれども)、基礎学力が担保できていない場合があり、結局入学してから授業についていけず、留年する人も多く出ていました。この点、CBTは後で示すように、予測精度が非常に優れていて、入学後の修学状況をかなり長期にわたって予測できる、ということを説明しました。
そして、今後おそらく一般選抜以外の入試がさらに拡大するだろう、ということも理由の一つです。現状でも、全大学で一般選抜以外の入学者が67%と言われますが、今後は国立大学も含めて、その割合がさらに増加してくるでしょう。そうすると、大学の入試業務の負担はとんでもないことになります。
ですから、それらを踏まえたとき、大学にも高校にも負担をかけない。そして、総合型選抜や学校推薦型選抜として、受験生には、「受験のための勉強はしなくてよい。普段やっている興味・関心のある自由研究や探究活動に打ち込んで、基礎学力としては学校の勉強をきちんとやっていればよい」ということを示すことができる。さらに、そういった人の入学後を正確に予測して、大学の学びにきちんとついていけることを保証できるのがCBTである、と説明しました。
結果として、大学から「それが本当なら良さそうだ」と言っていただき、2025年度入試から本学のCBT入試が始まりました。
本学の入試区分には情報系のⅠ類、融合系のⅡ類、理工系のⅢ類の3つがありますが、このうちⅠ類の総合型選抜と学校推薦型選抜にCBTを導入しました。CBTで入学した学生のデータが集まり始めましたので、本日は、彼らの入学後の成績についてもお話しします。

本学のCBTの入試では、「AIに負けない能力」について、先ほど平さんからお話のあった、DNCで作ったTAOを用いて、実際にプログラミングをさせる問題で測りました。
我々はCBT入試のスローガンとして「入試が変われば教育が変わる!!」を掲げています。高校時代に自分の好きなことに打ち込んで、すばらしい成果を上げたけれども、受験勉強が苦手で良い大学に行けない、という人も結構いるのではないでしょうか。そういった人たちに対して、本学の総合型選抜や学校推薦型選抜では、高校の勉強は普段通りして、その上で自分の興味や関心について、プログラミングやデータサイエンスに取り組んできたことの成果を面接で発表してもらい評価します。そして、基礎学力はCBTで測ります。
CBTの導入以前は、取り組んできたことの成果のプレゼンだけを見て評価していました。しかし、結構すばらしい研究をしていた人も、入学したら意外に授業についていけないことがあります。また、高校の成績はある程度良くても、やはり、入学後についていけなくなる人もいます。そういったことを踏まえて、基礎学力をきちんと担保すべくCBTを導入しました。

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