KEI BOOK CLUB

高等教育関連の新刊書を中心に、さまざまなジャンルの書籍を紹介するコーナー

『〈新しい能力〉は教育に何をもたらしたのか 資質・能力ベースの改革を飼いならす』松下佳代 編著(ミネルヴァ書房刊)

コンピテンシー、リテラシー、社会人基礎力――巷に溢れる〈新しい能力〉概念を、いま批判的に読み直す。

■本の内容

いま、日本で「資質・能力」の概念は、幼児教育から高等教育、生涯学習までを貫く目標として位置付けられ、広く深く浸透している。PISAリテラシーやコンピテンシーの概念は、世界においてますます影響力を増している。従来の「学力」の範疇に収まりきらない〈新しい能力〉概念は教育をどう変えたのか。そして、私たちはいかに光と影を把握し、飼いならすことができるのか。本書はその現状と課題を明らかにする。
[ここがポイント]
◎ 『〈新しい能力〉は教育を変えるか』(2010)から15年、多様に展開する国内外の状況をふまえ議論をアップデート。
◎ 「資質・能力」ベースの学習指導要領の議論に資する一冊。


■編著者:松下佳代(まつした かよ)
京都大学大学院教育学研究科教授。専門は教育方法学,大学教育学。主な著作に『対話型論証による学びのデザイン――学校で身につけてほしいたった一つのこと』(勁草書房,2021年),Deep Active Learning: Toward Greater Depth in University Education(編著,Springer,2017),『測りすぎの時代の学習評価論』(勁草書房,2025年)などがある。

■目次:

まえがき

 第Ⅰ部 原理と概念

第1章 コンピテンシー論の現在地――その混乱を解きほぐす(松下佳代)
 はじめに
 1 「コンピテンシー」という用語
 2 コンピテンシー概念の展開
 3 コンピテンシーの本質的特徴
 4 コンピテンシーを文化的にとらえ直す
 おわりに
 ブックガイド

第2章 なぜ能力を飼いならすべきか――労働力商品論から市民社会論へ(樋口太郎)
 はじめに
 1 「能力はいかに語られているのか」の現在
 2 「能力をいかに飼いならすのか」から「なぜ能力を飼いならすべきか」へ
 3 労働力商品論から「なぜ能力を飼いならすべきか」を問う
 4 「権利としての能力」から「財産としての能力」へ
 5 市民社会論から「なぜ能力を飼いならすべきか」を問う
 おわりに
 ブックガイド

第3章 PISAのリテラシーは変わったか――デジタル世界を展望した「読解力」のゆくえ(樋口とみ子)
 はじめに
 1 PISAにおけるリテラシー概念の変遷
 2 エージェンシーへの着目――批判的リテラシー論との関係
 3 リテラシーの非認知面――デジタル世界への展望
 おわりに
 ブックガイド

 第Ⅱ部 政策と実践

第4章 コンピテンシー・ベースのカリキュラム改革とはどういうことか――初等・中等教育でのコンテンツフリー化に抗して(石井英真)
 はじめに
 1 国際的なコンピテンシー・ベースの教育改革の展開と論争点
 2 コンピテンシー・ベースのカリキュラム改革の日本的展開
 3 改革を社会的自立と人間教育へとつなぐために
 おわりに
 ブックガイド

第5章 高等教育での統合的学習――市民性の育成と実質的な学習成果の可視化(杉原真晃)
 はじめに
 1 今日の高等教育改革の政策動向
 2 現代の高等教育の問題点
 3 人材育成偏重の克服のための統合的学習
 4 人材育成偏重の克服のためのサービスラーニング
 5 専門教育としてのサービスラーニングを通した市民性の育成
 おわりに
 ブックガイド

第6章 教師教育における能力の形成と評価をめぐる論点――〈新しい能力〉をどう飼いならしてきたか(遠藤貴広)
 はじめに
 1 日本の教師教育政策における能力概念の錯綜
 2 教師教育カリキュラム改革実践の展開
 3 〈新しい能力〉をどう飼いならしてきたか
 おわりに
 ブックガイド

 第Ⅲ部 海外の動向

第7章 オーストリア版「PISA型教育改革」――変質した改革の行先(伊藤実歩子)
 はじめに
 1 「PISA型教育改革」小史 その1
 2 2000年代-2010年代の批判
 3 「PISA型教育改革」小史 その2
 4 2020年代の批判
 おわりに
 ブックガイド

第8章 デジタル社会における教育とコンピテンス――スウェーデンのナショナル・テストをめぐる試行錯誤(本所 恵)
 はじめに
 1 世界で最もデジタル化の機会を活かす国をめざして
 2 デジタル・コンピテンスの定義
 3 教育におけるデジタル化
 4 ナショナル・テストのデジタル化に向けた試行と議論
 おわりに
 ブックガイド

あとがき
人名・事項索引


定価 4,950円(税込)
刊行日 2026年5月7日

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