日本栄養大学の「教室ネーミングライツ制度」が問うもの【独自記事】


2026年4月に、共学化と校名変更(旧:女子栄養大学)という大きな転換期を迎えた日本栄養大学(埼玉県坂戸市、理事長・学長:香川明夫氏)は、食関連企業からの寄付に対して、顕彰として坂戸キャンパス内の教室に企業名を冠する「教室ネーミングライツ制度」を新たに開始した。5月21日、この制度の趣旨に賛同した5社(キッコーマン(株)、味の素(株)、東海澱粉(株)、(株)サンベルクス、中沢乳業(株):契約順)との契約が成立したことを受け、同大学駒込キャンパスにおいて記者発表が行われた。

この制度は、栄養学の発展や、次世代を担う学生の育成を支援する企業への謝意を示すとともに、学生が実社会を身近に感じ、将来のキャリアを考えるきっかけを作ることを目的としている。寄付は原則5年以上で年額20万円以上。対象となる教室には各社の名称を冠したプレートが掲示される。
大学側は、これを単なる寄付活動に留めず、産学連携や就職支援、共同研究を深めるための重要な基盤と位置付けている。共学化による志願者数の大幅な増加(対前年比163.6%)という好機を活かし、教育環境の充実と産業界との強固なネットワーク構築を目指したいとしている。

■教室に企業名を冠する意味は

日本栄養大学のこの制度は、企業からの支援を通じて学生が業界をより身近に感じる環境を整え、食・栄養・健康の分野で活躍する人材を育成することを目指すもので、学生が日常的に使う空間であるからこそ、支援が可視化され、企業にとっても採用広報や社会貢献の文脈と接続させやすい。
今回の記者発表に出席した5社の代表者からは、栄養学という強い専門性を持つ学生の育成や、自社の研究開発や新規事業への協力関係の維持・発展に対する期待感が語られ、同大学が培ってきた、栄養学の科学的な理論と実践を究める教育・研究の実績への高い信頼がうかがわれた。


■大学財政の「二本柱」の揺らぎとネーミングライツ

少子化、物価高、人件費上昇、施設更新費の増大等、大学を取り巻く経営環境が厳しさを増すなか、教育研究を支える財源の確保は、各大学に共通する課題となっている。そうした中、同大学が打ち出したのが「教室ネーミングライツ制度」である。
大学の財源は、「学生からの納付金」と「国からの補助」が二本柱であるが、特に私立大学は学生納付金への依存度が高い。文部科学省の調査では、令和7年度の私立大学の初年度学生納付金等の平均は150万7,647円で、前回調査比2.1%増(※1)となっているが、授業料、施設設備費などは上昇傾向にあり、学生側の負担増にも限界がある。
 ※1文部科学省 私立大学等の令和7年度入学者に係る学生納付金等調査結果について

一方、18歳人口は、2005年の約137万人から現在は約110万人まで減少し、2035年には約96万人、2040年には約82万人まで減少する推計が示されている(※2)。学生納付金を増やそうにも、そもそも市場自体が縮小するという厳しい状況にある。
 ※2中央教育審議会大学分科会(第178回)・高等教育の在り方に関する特別部会(第8回)合同会議配付資料

さらに、国の支援も、「全大学を一律に厚く支える」方向ではなく、経営改革や機能強化を促す方向に寄っている。文部科学省は「少子化を乗り越えるレジリエントな私立大学等への構造転換」を掲げ、経営改革を行う大学を支援する事業を展開している(※3)。つまり、大学は従来の二本柱の財源に依存する経営から、社会から支援を集める経営へと移行せざるを得なくなっているのである。
 ※3文部科学省 少子化時代を支える新たな私立大学等の経営改革支援

このような状況の中で、ネーミングライツ制度を導入する大学も拡大している。代表的な事例を下表にまとめた。

ネーミングライツ制度を導入する大学の例(各大学のホームページからKEIで作成)

ネーミングライツの金額は、対象となる施設の規模や立地により、年間数十万円から数千万円と幅広い。講義室やラウンジなどの小規模な施設は年間100万〜200万円程度から募集されることが多く、建物全体や大規模施設では年間1000万円以上になることもある。日本栄養大学の教室ネーミングライツ制度は、比較的少額寄付の事例にあたる。

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