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複雑・多様化する社会の構造的な課題を提起し、これからの高等教育のあるべき姿などを問い、課題解決の方法を提言していく。

情報処理学第88回全国大会レポート「新課程『情報入試』― 2年目の共通テストと広がる個別入試」パネルディスカッション

高校現場から見た情報入試~2年目の大学入学共通テストを終えて【独自記事】

京都産業大学情報理工学部 安田 豊先生
岡山県立岡山操山高等学校 太田 重成先生

安田 豊先生
太田 重成先生

情報入試が広がるにつれて、高校での「情報」の教育と情報入試、さらに入学後の学びとの接続がますます重要になっている。情報処理学第88回全国大会のイベント企画「新課程『情報入試』― 2年目の共通テストと広がる個別入試」のパネルディスカッションでは、高校では情報入試にどのように対応しているか、生徒たちはどのようにとらえているかについて、高校の情報科教員と、情報入試を実施する大学教員との間で意見交換を行った。

なお、本稿は掲載許諾をいただいた先生がたの発表から構成したものである。


共通テスト「情報Ⅰ」は、難易度よりも時間配分の難しさが問題

安田先生:
はじめに私から、京都産業大学情報理工学部の情報入試についてご紹介します。導入の理由は非常に単純で、「情報が専門であるなら、その科目の入試を自前で用意するのは当然だろう」ということで、2016年度(2015年夏実施)から「AO筆記入試」として、AO入試の中で「情報」の学力試験型の入試を実施してきました。
2025年度から、情報理工学部と理学部の一般入試前期日程で、従来の「スタンダード2科目型」の併願オプションとして「情報プラス型」を導入し、今年度からは推薦入試でも実施しています。

現時点で公開できる2026年度の情報入試の実績として、受験者数の比率を紹介します。上段が推薦入試、下段が一般入試前期の、入試日ごとの受験者の比率です。赤い部分が「情報プラス型」の個別入試を設定した日で、全体平均に比べると受験者が多くなっています。特に情報理工学部に関しては、情報入試はかなり吸引力があると見ています。

情報理工学部の推薦入試の受験者数の増加は、情報プラス型の受験者数にほぼ一致します。また一般入試では、情報プラス型で出願した人のうち、43%が実際に「情報」を選択して受験しています。定着率を見ても、情報プラス型で合格した人の定着率は高くなりそうなので、我々が望む学生を選抜することができた、と見ています。一般入試の情報プラス型は、昨年に続いて2年目ですが、昨年も同様な状況でした。

それでは太田先生、お願いします。

太田先生:
私は現任校では3年目で、昨年度は、初めて大学入学共通テストに「情報Ⅰ」が導入された学年となる3年生を担任として送り出しました。今年は1年生の学年主任を務めています。
共通テスト「情報Ⅰ」の感想ですが、昨年度の問題は、自分で解いていてもワクワクして、夜更かしをしてしまったほどでした。今年度の問題も、本当にすばらしかったと思います。

今年の「情報Ⅰ」は平均点が大きく下がったため、難化したと言われていますが、私個人としては、昨年度は特殊な状況で実施されたため、受験生への配慮として、やや易しかったのは仕方なかったと思います。
2022年度の新課程の実施に伴って、2025年度入試から「情報Ⅰ」が共通テストに入ること自体は、私たち高校の教員はわかっていましたが、大学が本当に採用するのかということについては、正直疑念を持っていました。ところが、実際に新課程の授業が始まって、3学期になってから国大協から「国立大学は『情報』は原則採用」という方針が出たので、現場は非常に慌てました。2025年度入試の「特殊な状況」というのがこれです。

今年の受験生に関しては、1年生の段階で、「情報Ⅰ」が国立大学の入試に採用されることを全員覚悟しており、その意味でも今年度の問題は、「これぞスタンダード」という良問であったと思います。そして、同時に私たち高校教員には、「この内容を授業できちんとやるように」というメッセージが届けられた、という思いでした。

ただ最大の問題は、現在の共通テスト全ての教科・科目に共通するところですが、時間配分が非常に難しいことです。時間をかければ解けるけれども、効率よく解き進めていくのが非常に難しい。受験テクニックとして、解く順序などにはいろいろな意見がありますが、私が指導する際には、あくまで生徒個人の得意・不得意の内容で判断させるべきと考えています。

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