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複雑・多様化する社会の構造的な課題を提起し、これからの高等教育のあるべき姿などを問い、課題解決の方法を提言していく。

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悪化する学生のメンタルヘルス 対応に苦戦する大学の姿が浮き彫りに【速報版・全国国公私立大学学長アンケート2024-2025集計結果】

KEI大学経営総研(河合塾グループ KEIアドバンス)は、2025年1月から3月にかけて、全国の国公私立大学の学長を対象とした大規模なアンケート調査を実施した。

本アンケートは、大きな環境的変化にさらされている大学の取り組みを全国の学長に問い、その内容を集計・分析している。今後の大学経営へのヒントを提供することを趣旨として実施されており、集計データは公開後、各大学にも結果のフィードバックが行なわれる予定。

2024年度版の調査では、全国の国公私立大学786校にアンケートへの協力を依頼。345大学から回答が得られ、回収率は43.9%であった。なお、回答校の設置者種別の内訳は、国立大学44校、公立大学53校、私立大学248校である。

調査は、以下の6テーマに関して行われた。
Ⅰ.大学の基本情報
Ⅱ.大学経営のビジョンおよび未来の大学
Ⅲ.学生の変化
Ⅳ.学生募集・広報
Ⅴ.入学者選抜
Ⅵ.大学の国際化


大学生のメンタルヘルス状況 コロナ禍以前よりも悪化

上記のテーマのうち、「Ⅲ.学生の変化」に関する各項目では、学生のメンタルヘルスへの対応に苦戦する大学の姿が浮き彫りとなった。


2019年以前と現在を比較し、「メンタルヘルスに問題を抱える学生の増減」を問うた質問では、260校(75.4%)の大学が「増えた」と回答。コロナ禍以後、学生のメンタルヘルスが悪化している状況が明らかとなった。

なお、「増えた」と回答した大学の内訳は、国立大学28校(/44校・63.6%)、公立大学39校(/53校・73.6%)、私立大学193校(/248校・77.8%)である。 ※未回答9校

Ⅲ-1.2019年以前と現在を比較したとき、メンタルヘルスに問題を抱える学生の増減について教えてください


また、下表に示す項目の相談件数を「多い」「少ない」「相談はない」の3択で問うた質問において、「多い」との回答が200以上得られたのは、「就職関係」「学業・研究」「モチベーションがあがらない、目標が持てない」 「不眠、朝起きられない」の4項目であった。学修意欲を含む、いわゆる「やる気」の面での相談が上位に入ってくるのは、特筆すべき点であろう。

自由記述式の回答では、これらの項目以外に、「人間関係、友人関係」「合理的配慮」「ジェンダー」「学費などの経済的問題」なども挙げられている。


Ⅲ-4.学生からの相談件数について教えてください


さらに、学生のメンタルヘルスへの対応にあたり、「最も課題となっていること」としては、「C.相談内容の多様化」ならびに「A.問題を抱える学生の把握」が突出する結果となった。

A.問題を抱える学生の把握
B.カウンセラーの不足
C.相談内容の多様化
D.カウンセラー等の人件費
E.学生相談室等の施設設備費
・その他

Ⅲ-7.学生のメンタルヘルスへの対応にあたり、最も課題となっていることは何ですか


本テーマの詳細分析や他テーマの結果は、順次公開予定。

山口夏奈(KEI大学経営総研 研究員)

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