
豊島岡女子学園 中学校・高等学校 インタビュー[前編]
探究活動が学生にもたらした変化――豊島岡女子学園高等学校【独自記事】
豊島岡女子学園中学校・高等学校は、2018年度から文部科学省のスーパーサイエンスハイスクール(SSH)指定校に認定され、学内外で多種多様な取り組みをおこなってきた。2022年には高校入試を廃止して完全中高一貫校となり、6年間を通した探究活動を実施している。自身も同校の卒業生であるインタビュアーが、その取り組みの実態と、学生たちにあらわれた変化について聞いた。
教務部長・教務部 進路進学指導委員会主任 十九浦先生
探究部会主任・総合企画委員会主任 増田先生
SSH推進委員会主任 豊田先生
■中学生から取り組む、6ヵ年一貫の探究活動
--まず、中学入学から高校卒業までの6年間で、どのような探究活動をされているのかというところからお伺いしたいと思います。
増田:本校はスーパーサイエンスハイスクール(SSH)指定校です。ハイスクールと名につく通り高校生になってから本格的に探究活動を行うのですが、通年でひとつのテーマに取り組むためには、高校生になってから始めるのではなく、6ヵ年一貫の取り組みとして準備をさせていくという体制で本校は取り組んでいます。
中学生がまず取り組むのは、『探究Basic』というプログラムです。このプログラムは希望者のみが参加し、グループでひとつのテーマを選んで、それについて取り組んでいくという活動になっています。テーマについては自分たちで考えるグループもありますが、本校が連携している豊島区の様々な部署から、「若い人からこんなことについて意見があったら聞きたい」というようなお題をいただいたりもするため、興味があって取り組んでみたい学生は、それをテーマとして設定します。
また、その他にも、各教科の教員設定テーマとして、毎年校内にいる全教員からテーマを募集しています。テーマを設定できない、難しいと感じた中学1年生が活動自体に取り組む機会がないのはもったいないので、中学1年生はそういうものからテーマを選んでもいいよと声をかけ、なるべくたくさんの生徒が希望して、通年かけて何かひとつのことを調べていく活動ができるようにサポートしています。
--『探究Basic』は希望制ということですが、参加率はどのくらいでしょうか。
増田:学年の半分から3分の2ぐらいの生徒が参加しています。毎年『AcademicDay 1st』、『AcademicDay Final』という探究活動の発表会があるのですが、『探究Basic』の発表件数はだいたい100件ぐらいなので、1グループ4人ぐらいで組んでいると考えると、かなり多くの生徒が参加していることになります。
高校生になってくると、今度は希望制ではなく、学年全員で探究活動に取り組んでいきます。
必ず客観的なデータに基づいたもので証明していけるような、目に見える形で探究のサイクルを回すことによって、より分かりやすく、学びやすくするという意図があって、高校1年生は学年全員がサイエンスという括りのテーマで探究活動を行うことになっています。
--サイエンスをテーマとするということは、基本的には理系の探究テーマということでしょうか。
増田:探究テーマというよりは、方法が理系というイメージです。テーマとしてはデータサイエンス等も含め、身近なもの、興味があるものについて、いろいろな形で研究をしています。
たとえば、「ヒット曲の曲調の明るい、明るくないというのと、その時代の経済の景気に関係はあるのかな?」という疑問を、データを使って明らかにしようと取り組んでいる生徒もいました。理系の題材だけではなく、幅広い関心の中からテーマを選ばせています。
--テーマは生徒が自由に決めることができて、そのアプローチの仕方をきちんとサイエンスに則って取り組むということですね。
増田:そういう形でやっています。興味を持っていること、ありとあらゆることについて自由に取り組んでいますけれども、その切り口、「どうやって」の部分は必ずサイエンスでやってもらう。本校はこの探究活動を通じて、自分の志の力で未来を切り拓いていくような女性を創りたいと思っています。その志の力とは、どんな力の掛け合わせで伸ばしていけるのだろう?と考えた時に、「創造力」「思考力」「挑戦力」「協働力」「議論力」「主体性」の6つの力が必要なのではないかと私たちは考えています。
その中で、他者と一緒に何かに取り組むための「協働力」、「議論力」、またグループの中でも、自分は何ができるのだろう?と考えていくための「主体性」はとても大切になってくると思います。高校1年生の時はそれらの力を伸ばしてほしいので、グループで、サイエンスに則って取り組むように、という縛りをかけています。
高校2年生になると更に皆成熟した探究活動をすることができるようになるので、分野も文系の生徒は人文だったり社会科学だったり、そういうものに取り組んでいる生徒もいますし、グループではなく独り立ちして個人で取り組んでいる生徒もいます。今まであった縛りを外して、本当に自分のやりたいことを自分がやりたい方式で取り組むという形です。
高校3年生はサイエンスをテーマにしたいろいろなオムニバス講義に加え、もう少し高度なもので、5コマぐらいで答えまでたどり着くことができるような科学探究のお題に取り組みます。それを高校3年生の時間の中で、次はこの分野、次はこの分野というように複数のテーマを移動しながら取り組んでいく生徒もいますし、自分がやってきた高校1年生、高校2年生の探究活動を引き続き2学期の最後まで取り組む生徒もいます。
以上のような、学年ごとに行っているものだけではなく、『T-STEAM:Pro』というプログラムもあります。希望者対象の高度なもの作りのチャレンジで、中学校2年生から高校2年生まで、希望する生徒でグループを作って参加できます。このプログラムは、毎年テーマが変わります。プログラムが開始した2015年から毎年毎年新たなテーマを設定して、「やりたいです」と手を挙げて参加を表明した希望者の子たちが取り組んできました。中学生は年に2回、『T-STEAM:Jr』という学年行事でも、もの作りのコンテストに取り組んでいます。
--『T-STEAM:Pro』は、毎年どのくらいの人数の学生が希望して参加されていますか?
増田:年度によってかなりばらつきがありますが、今年度は15グループ以上参加していました。プログラムの最後にコンテストがあるのですが、それは学外からも参加を可能にしていて、150名程が参加しました。その中で本校の生徒が半分以上いたので、70~80名程の生徒が取り組んでいた形です。 今年度のテーマは、自律走行型のロボット開発でした。ひとたび置いたら、付いているセンサーだけで障害物や坂道、曲がり角をクリアしてゴールまでたどり着くことができるロボットを開発する、という挑戦です。
