
連載:大学生と奨学金 数字から見る奨学金制度の現状とキャリアへの影響
2.キャリア選択を歪める経済的バイアス
この「300万円の負債」は、学生の心理にどのような影響を与えるのでしょうか。キャリア支援の現場で見えてくるのは、本来あるべき「自己実現」や「適性」に基づいた職業選択が、経済的合理性によって塗り替えられていくプロセスです。
① 「やりたいこと」より「返せること」へのシフト
かつての就職活動における「3年離職率」の問題は、主に職務や企業とのミスマッチが原因でした。しかし現在は、別の力学が働いています。奨学金の返還を抱える学生は、心理的に「失敗できない」という強烈なプレッシャーを受け、その結果、起業やベンチャー企業、あるいは地方での就業といった「不確実だが可能性のある選択」を避け、目先の給与水準や福利厚生(特に住宅手当や返還支援)を優先する、極めて保守的な選択を余儀なくされる傾向があります。
② 初任給への過度な依存
月1.5万円から2万円の返還は、手取り20万円前後の新入社員にとっては、家賃や食費に次ぐ大きな固定費です。この支払いが、若手社員の「自己投資」の機会を奪っています。書籍の購入、セミナーへの参加、資格取得にむけた講座の受講。スキルアップのための余剰資金が奨学金返還に消えていくことで、中長期的なキャリア形成にブレーキがかかってしまうのです。
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