連載:大学生と奨学金 数字から見る奨学金制度の現状とキャリアへの影響

データで読み解く大学生のキャリア支援と奨学金制度 Vol.1

大学教育の「入口」と「出口」を繋ぐ見えない鎖

大学教育の質が問われ、学生募集の難易度が上がる中、大学関係者の皆様にとって「学生のキャリア支援」は最重要課題の一つでしょう。しかし、その支援の前提となる「学生の懐事情」──特に奨学金という名の「負債」が、彼らの将来をいかに縛っているかについて十分に理解されているでしょうか。
現在、日本の大学生の2人に1人が何らかの奨学金を利用しています。かつての「苦学生への育英」という枠組みを超え、奨学金はすでに「進学のための標準的なインフラ」となりました。しかし、このインフラが「出口」であるキャリア選択の場面で、学生たちの自由を奪う重い鎖となっている現実があります。
本連載では、奨学金が現代の若者のキャリア観やライフプランに与えている影響、そして大学・企業が取り組むべき新たな支援の形について考察していきます。第1回となる今回は、数字から見る奨学金の現状と、それがキャリアに及ぼす影響に焦点を当てます。

1. 数字が語る「標準化」された負債の重み

まず、現在の奨学金制度を取り巻く全体像を確認しましょう。日本学生支援機構(以下、JASSO)の調査によると、令和6年度末時点で奨学金の総貸付残高は9兆2,724億円にのぼります。この数字は、日本の国家予算における「防衛関係費」とおおよそ同等の規模となっています。

そして、大学学部(昼間部)の奨学金受給率は、約55.0%(令和4年度)に達しており、もはや「特別な事情がある学生が借りるもの」ではありません。また、ここで注目すべきは、その「額」と「期間」です。

・平均貸与総額:323万円(有利子・無利子、私立・国公立により変動)
・平均返還期間:15年
・月々の返還額:約2万1,500円

大学を卒業したばかりの22歳の若者が、300万円以上の負債を抱えて社会に出る。そして、不透明な経済状況の中、40歳前後まで毎月返還し続ける。これが現代の「標準的な新卒社員の姿」なのです。

なぜ、ここまで利用者が増加したのでしょうか。最大の要因は、家計の可処分所得の伸び悩みと大学授業料の高止まりです。高等教育を受けるためのコストが、公的負担から私的負担へと移行した結果、家庭の自助努力の限界を超え、学生自身の「将来の賃金の前借り」によって補填されているのが現状です。

(次のページに続く)

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