
CBTの可能性と教育的エビデンス -全国学力・学習状況調査と入学者選抜の挑戦-【vol.2】
■ 今後のさらなる改善に向けて
全国学調という大規模なCBT調査を2年実施しましたが、まだ改善の余地はあると考えています。スライド30は、6月1日の全国学調の専門家会議で示された資料ですが、今後期待される内容を黄色のマーカーで示しています。
1つ目はビッグデータとしての活用です。先述のように、調査の結果をビッグデータとして活用するべく意識してきたところですが、活用可能性はまだあると思います。例えば、先ほど見ていただいた分析ツールも、現時点では集団としての分析にとどまっており、個人の結果を見ることはできません。全国学調の結果を一人ひとりの指導に活かしていくためのデータ利活用の可能性は、まだまだあるのではないかと考えています。
2つ目が自動採点です。先述のように、この2年でも自動採点の活用は進みましたが、自動採点の性能が更に向上すれば、結果返却も早期化できる可能性があります。
実は、4月23日に実施した今年度(令和8年度)調査も、多くの採点者の方にゴールデンウィーク期間も含めて採点をしていただき、昨日(6月3日)、ようやく英語の「話すこと」以外の採点が終わりました。100万人×2学年で、かつ記述式の問題もありますから、採点だけで1か月半かかります。
以前は結果の返却は8月末頃でしたが、平成30年度調査から7月末に、そして昨年(令和7年)度からは1学期の間に、学校に結果を返すことができるようになりました。ただし、調査結果を子どもたちのために活用するには、結果返却の更なる早期化が求められており、そのための一つの手段として、自動採点が期待されています。
3つ目が、不登校の児童・生徒や、病気などで学校に登校できない子どもたちに対する調査実施です。今までは紙での実施だったので、学校以外での実施は困難でしたが、今はオンラインですので、学校外でも調査を実施することが可能になりました。
そして、アダプティブ方式の導入です。今は、最初からセットされている問題を、子どもたちに割り当てて解いてもらっていますが、アダプティブ方式を導入すれば、より精度の高い学力測定ができるようになる可能性があります。

■(参考)公教育データ・プラットフォームで見る子どもたちの変化
最後に、私は現在、5年前に国立教育政策研究所に設立された教育データサイエンスセンターにも所属しています。ここでの取り組みを参考にご紹介します。
教育データサイエンスセンターでは、国立教育政策研究所のホームページ内で、国の教育データに関する「公教育データ・プラットフォーム」を運用しています。ここでは、文部科学省や国立教育政策研究所等が実施した教育分野の、自治体・学校等の状況に関する調査データや、研究成果・取組みの事例を集約し、紹介しています。2026年1月には、これまで20年近くにわたって実施されてきた、全国学調の質問調査のデータをまとめて見られる「質問調査アーカイブ」をオープンしました。
例えば、全国学調では、「自分には、よいところがあると思いますか」という質問を、調査開始当初から継続して行っていますが、この20年弱の間で、肯定的に答える人が小学校・中学校とも増えた、ということを確認できます。
他にも、文部科学省の様々な統計資料を掲載しています。例えば、学校保健統計調査では、1949年度から子どもの虫歯の調査を行っています。スライド31の右のグラフは、小学生の虫歯被患率を示していますが、緑の部分が虫歯のある小学生の割合、薄い緑が処置歯がある小学生の割合、白いところが虫歯が全くない小学生の割合です。高度経済成長期は、小学生は虫歯があるのが当たり前という状態でしたが、現在は虫歯がある子の割合がここまで減った、ということを見ていただけます。


ただし、全体の傾向を示すことはできても、一人ひとりのデータを把握したり分析したりするのは難しいです。国の機関が行うことなので仕方ない部分はありますが、この点については、教育委員会や学校などと役割分担しながら進めていく必要があると感じています。
次ページ▶ディスカッション(電気通信大学がCBT導入に至るまで/アダプティブ方式の課題と意義/全国学調におけるCBTのさらなる可能性)


