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情報入試実施大学レポート2026―松山大学・高知工科大学・広島市立大学・立命館大学―

【立命館大学 情報理工学部】立命館大学における情報入試の導入について〜2026年度一般入試〜

立命館大学情報理工学部 島田 伸敬教授

島田 伸敬教授

私からは、比較的マンモス型の大学である立命館大学における情報入試の導入についてお話ししたいと思います。
今回の講演の内容につきましては、他の先生方もおっしゃっているように、入試業務は、特に私立大学にとっては死活問題で、公開できないことがあること、また今回のお話は私の個人的な意見を含むことをご了承ください。


全学的なトップダウンの意思決定から情報入試を導入

本学では、昨年度の入試から「情報」を試験科目とする入試方式を導入し、今年2026年度入試からは、一般入試に独自の記述式の試験を取り入れました。本学が「情報」の独自試験を実施するにあたっては、どの大学も同様と思いますが、2030年を目指した中期目標を作って、どのような形で大学・大学院を改革し、前進させていくか、という計画を立てました。この中で、「イノベーション・創発性人材を生み出す」「新たな価値を創造する次世代研究大学を目指す」ということをスローガンとして掲げています。そして、この目標を実現する人材を育成するということは、当然ながら入試にも関わってきます。
つまり、本学の情報入試の導入は、ある種全学的なトップダウンの意思決定から進められた、ということになります。

私自身は情報系の学部ですので、もともと情報入試を導入すべきだ、と言っておりましたが、今回の導入は、もう少し広い視野から考えて、我々の大学は文系の比率がかなり大きいので、文系の学部も巻き込んだ形で大学として情報入試に取り組もう、という意思決定をしたところから話が始まっています。


むしろ人文・社会系学部が情報入試導入に積極的

「情報」は、文系・理系の分野を問わず求められる知識やスキルであり、能力であるということです。情報技術やデータの分析技術は、理系は言うに及ばず、ビジネス、法律、政治、人文などあらゆる分野に浸透し、様々な活用がなされています。

文理融合と言いますが、「情報」というのは、もっと広い意味で多岐にわたる分野を支える基本的なスキルと言ってよいのではないか、ということで、ここに挙げた7つの学部が、今回2026年度入試において、一般入試で記述式の「情報」の独自問題の入試を導入しました。
実は、情報入試を導入した理系学部は情報理工学部だけです。どちらかというと、文系の学部の方が反応がよかったのですね。導入の理由として、経営学部であればビジネスにはデータ分析や意思決定が、映像学部ではデジタルメディアが欠かせません。総合心理学部でしたら、人の心や行動を分析するためには情報の力が非常に重要であるとしています。このように、情報学というのはある種抽象的な学問でもあって、各学部が専門とする内容を抽象化して表現することができるという意味で、むしろ人文系・社会系の学部の方が強く反応してくれた、ということがあります。

理系の学部については、これは後ほどお話ししますが、入試科目という点ではやはり理科との競合になるのですね。選択科目で何を取るか、というときに、理科であれば高校3年間で4単位、あるいは6単位分しっかり学んでいますが、「情報Ⅰ」はせいぜい2単位で学習時間の差異が大きく、同等に評価することが難しいというところもあり、2026年度入試では見合わせた、ということがあります。


年内入試「UNITE Program」と共通テスト利用の一般入試

本学の入試方式として、年内入試と一般入試があります。情報入試の導入という意味では、「情報Ⅰ」が必修になった時点、つまり2025年度の年内入試の「UNITE Program」に「情報」を指定単元として導入していました。
一般入試では、2025年度の大学入学共通テストに「情報Ⅰ」が入った時点で、共通テストの「情報Ⅰ」の得点を加味する方式を導入し、今年度いよいよ満を持して独自試験に「情報」を入れた、ということです。

「UNITE Program」は、総合型選抜(AO選抜入試)の方式の1つです。志望する学部・学科の学びで特に重要な数学や国語などの指定単元をAI教材で修得し、修了試験に合格すると、AO選抜入試への出願要件を満たすことができるというもので、その指定単元に「情報」を導入しました。

大学の学びと高校の教科学習の繋がりを各学部のアドミッション・ポリシーに則した形で発信し、入学後の意欲と基礎学力を両立させ、しっかり選抜ができる入試としてAI教材の学びをエビデンスにして、その指定単元に「情報Ⅰ」が入っている、ということです。スライドの赤字で書いてあるのが「情報Ⅰ」を導入した学部です。
※「UNITE Program」は学校法人立命館の登録商標です。

一般入試では、2025年度から共通テストに「情報Ⅰ」が入ったので、教科「情報」で学ぶ内容を重要視する学部においては、共通テストの「情報」の得点を活用できる方式を導入しました。この中には、共通テストの得点のみで合否判定をする方式もあります。これは、共通テストの得点の高い科目から順に採用するというものですが、この選択科目に全学部で「情報Ⅰ」を追加しました。これは、国公立大学と併願する人に受けていただきたい入試方式です。


独自出題「情報」による一般選抜

さらに今年、一般選抜で独自出題の「情報」を導入しました。本当は、昨年度共通テストに「情報Ⅰ」が入った時にやりたかったのですが、なかなか準備が間に合わず、1年遅れになりました。この「学部個別配点方式」はかなりボリュームのある定員を割いて実施するもので、多くの学部で2番目に募集人数の多い方式になっています。
「情報型文系」は、英語と国語に「情報」を加えた3教科、「情報型理系」は英語と数学に「情報」の3教科です。各学部で同じような問題セットを使っていますが、配点は学部によって異なり、英語や国語よりも「情報」の配点を高くしている学部もいくつかあります。我々情報理工学部は、「情報」は入学してからしっかり教えるので、英語と数学は高校でしっかり勉強してきてほしい、ということで、情報のウェイトは若干軽めにしています。

どのような問題を出すか、ということについては、一般入試に導入するのであれば、やはり高校の学習指導要領が基盤となる共通テストをまずは参考にすることになります。そこで、共通テストの「情報」の試作問題や、昨年度の出題内容を参考にしながら、4つの分野から万遍なく出題しました。
試験時間については、共通テストの試験時間は60分でしたが、中身をきちんと理解して正解にたどり着く力をしっかり見たかったので、少し長めに時間を取って、80分ということにしました。
これについては、2025年8月のオープンキャンパスで試作問題を公開して、私の方で解答・解説を行いました。土日の2日間で実施して、500人強の参加者がありました。このような形で問題の周知をして、この2月の一般入試で出題しました。


手順を追ってトレースする力を測る問題設計

こちらが今年度出題した問題です。電卓のキーを押していったときの状態遷移を考えながら、数字や演算子を並べた数式を生成する状態遷移モデルを考えるものです。「情報Ⅰ」では状態遷移図を扱うことになっているので、単純な知識問題ではなく、指定された文字列を生成する遷移図を選んだり、ある状態遷移図と等価な遷移図を選んだり、という、手順を追って順にトレースすることができるかを見る問題を出しました。

また、プログラミングは非常に重要なところです。これは穴埋めの問題もありますが、一部記述式でコードを書いてもらう形式にして、ここでも手順を追って頭の中でトレースすることが必要な問題にしました。
列車の路線図から運賃を計算する問題で、最初は1次元の往復でしたが、端の駅をつないで環状線にしたときの運賃を計算するプログラムに拡張させます。そうすると、内回りと外回りをどのように処理するか、ということも考えなければならず、いろいろ複雑な処理が必要になりますが、そういったことをしっかりと考えられる受験生に合格してほしい、という意図を込めてこのような出題をしました。


文系学部の情報入試のさらなる拡大を目指して

今回の一般入試学部個別方式「情報型(理系/文系)」は、2月7日に関西の3つのキャンパスと、全国約20の試験会場で同時に実施しました。結果的に出願者415人中4割強が文系学部で、半分以上が情報理工学部でした。私としては、もう少し文系の学部にたくさん出願してほしいというところもありますので、そのためには一般入試で合格を出して、「情報」を活用した入試方式で入学できる、という実績を積んでいくことが必要であると思っています。

入試の成績の傾向や、どういった成績の学生が入学してくれたのか等々についての分析は現時点ではまだ出ておりませんので、次の機会に譲りたいと思いますが、今年度の情報入試は、共通テスト併用型と合わせて約1,000人の受験生を集めてスタートしました。

本学の事例は、マンモス大学と言われる規模の大きな大学で、主に文系を中心に情報入試を導入したというところが特色であると思います。理系に限らず、むしろ今後は文系の分野において、情報技術や生成AIなども使いこなしていかなければならない。その意味で、「情報」の基礎能力を問うことは、非常に重要であると思います。今日のお話が、今後情報入試を検討される皆様の何らかの参考になれば幸いです。


インタビュー・記事:小松原 潤子(KEIHER Online 編集委員)
編集:阿部 千尋(KEI大学経営総研 研究員)

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