
情報入試実施大学レポート2026―松山大学・高知工科大学・広島市立大学・立命館大学―
【高知工科大学 情報学群・データ&イノベーション学群】高知工科大学における「情報」入試を実施して
高知工科大学データ&イノベーション学群/情報学群 松崎 公紀教授

本日は、先日実施した、本学最初の一般選抜前期日程入試における情報学群/データ&イノベーション学群の選択教科「情報」について報告します。発表の内容については、本学の入試部門から共有された内容と、入試後に実際の答案を見て気づいたことを中心に、私個人の意見としてお話しします。
一般選抜前期日程個別学力検査「情報」の導入に至るまで
まず本学における情報入試の歴史的なところをお話しします。情報学群は、2020年度入試から、それまで推薦入試を行っていたのをAO入試に変更し、この段階で「プログラミング」という科目を出題しています。このAO入試で、面接重視のA区分では、現在大学入学共通テストで出題されている第3問のプログラミングよりやや簡単なレベルの問題を、実力勝負とされるB区分では、プログラミングに関しては、それよりはるかに難しい問題を出題しました。かなりチャレンジングな試みですが、この方式は現在も継続して行っています。
2021年に共通テストに「情報Ⅰ」が追加されることが予告され、2025年1月の共通テストから実施されました。共通テストで「情報」が入ってくるということは、各大学の個別入試でも導入されることが予想されました。本学は、フットワークの軽さを自負していますので、学内で準備を進め、2024年12月に、令和8年度入試の変更点として個別学力検査で「情報」を出題することを公表し、この2026年2月に最初の入試を実施した、という経緯になります。また、初年度の入試ということで、試験実施の約半年前に出題方針を公表しました。

今回は、情報学群とデータ&イノベーション学群という、情報技術に関係する2つの学群に絞って、それぞれ選択科目の候補を増やす、という形で導入したので、受験生にとっては不利益な変更ではなかろう、と予想しました。学内で「情報」の導入について議論した際にも、「『情報』で受験してみようかな」という学生が少しでも来てくれたらいいね、ということで「情報」の出題を決定し、新課程の入試2年目のタイミングで実施した、という次第です。
具体的な試験科目として、情報学群は必須科目の数学に加えて、もともと選択科目だった理科の3科目(物理、化学、生物)に「情報」を追加して、そこから1科目選択します。データ&イノベーション学群は、国語と数学から1科目選択、物理・化学・生物・英語に加えて「情報」から1科目選択ですので、こちらは完全に文系の学生も受けられる科目構成となっています。配点は、個別入試の合計400点のうち200点ですので、決して少なくない配点です。

出題方針で問題の概要を予告
2025年10月に本学が公開した出題方針がこちらです。大問3問からなる構成で、これは他の選択科目の問題構成に従っています。
大問Ⅰは、基礎知識や用語を理解しているかを問う、という問題。大問Ⅱと大問Ⅲは、「情報 I」 の内容のうち,(3) コンピュータとプログラミング(特に、二進法、数値の内部表現、論理回路、アルゴリズム、プログラミング、モデル化など)を主な出題範囲とする、論理的思考力を問うための問題です。その意味では、共通テストとは大きく毛色の違う問題が出ますよ、と告知しています。
特に、大問Ⅱ・大問Ⅲに関しては、「ゲームの規則も論理的なモデルの一種と捉えますよ」とわざわざ書いて、そういった問題が出ますよ、ということがアピールされていました。

各問題の概要~極端な難問ではなく、論理的に考えれば解ける内容
実際の出題です。大問Ⅰでは、知的財産権、情報サービスなど、様々な分野から基礎知識や用語を問う問題を10問出題しています。ハードウェアや電子メール、2進数の問題については、後ほど詳しくお話しします。
また、この大問Ⅰの中で、プログラミングのトレース問題を2問出題しています。長さとしてはそれぞれ9行と5行の、非常に短いコードではありますが、いきなりコードが書かれていて、それに対して答えさせる、ほぼノーヒントの問題です。

大問Ⅱは論理回路の問題です。論理回路は、既にいろいろな大学で出題されていたようです。最初は、いわゆる論理回路から真理値表を書き下すという単純な問題と、与えられた条件を満たす回路を穴埋めで作る問題で、選択肢の候補の数としては6通りと2通り×2ですので、ここはそれほど難しくはないものです。
その後の問題は、使用可能な回路を指定して、ここまで出てきた部品を使った、より複雑な回路を作る問題でした。条件がついているため一から自分で作り出す必要はありませんが,難易度は高い問題でした。

そして、大問Ⅲが先ほど述べたゲームの問題です。いくつかある山から石を順番に取っていくという「ニム」という対戦ゲームがモチーフの問題で、高校生にわかりやすくするために、「タイムカプセルのロックからピンを順に抜いて、最初に開けた人が勝ち」という設定になっています。問題としては状態を全て列挙して、その状態の遷移関係を正しくグラフとして書き下して勝敗を判定する、というものです。論理的に考えられるよう、全ての状態を列挙するのが可能な範囲になっています。ニムは、2進数表現での必勝戦略がありますが、そこは求めず、あくまで単純に状態を追う作業ができるかを見る問題になっています。
最初は4状態・9状態の比較的小さいものから始めて、ある形が負けの状態であることを説明する問題、さらに大きな問題からの勝敗判定を、自由記述で行います。最後の問題は、全て列挙しようとすると状態が結構多くなりますが、うまく考えて、調べなくてよい状態を削ってしまえば、調べなければならない状態の数は10個程度になるので、それに気が付けばそれほど難しいわけではありません。

「情報」の受験者は両学群とも予想以上に多かった
今回の試験の結果をご紹介します。まず受験者の「情報」の選択状況ですが、これは我々も驚くほど多かったです。学内の会議では、少数でも選択してくれればいいね、と考えていましたが、情報学群で過半数、データ&イノベーション学群では約4分の3の受験者が「情報」を受験しました。受験生にとって「情報」は選択可能な科目になっていたことがわかります。今回「情報」を出題したことは成功であったと思っています。

得点分布については、全体の平均点が53%でした。選択科目なので、他の選択科目とのバランスも大事ですが、結果的には、その観点でもちょうどよいところに収まったようです。
単純に手を動かす問題はよくできるが、基礎知識の定着に問題
ただし、問題別の得点率はかなり大きく違っていました。実際に問題を見た私がこのくらいの難易度かなと思っていて考えていたものとの差が大きかったものもあります。
まず大問Ⅰの基礎知識・用語の問題は、6~7割は解けるだろうと思っていたのですが、正答率は約45%で、予想より良くなかったです。大問Ⅱの論理回路は、特に後半が難しいので、これも5~6割程度かと思っていましたら、そこは8割くらい取れていました。
大問Ⅲのゲームの問題は、やはり難しく、正答率は約30%でした。これらの結果から、今の高校生は、比較的わかりやすい単純な作業というのはちゃんとこなせる一方で、規則を与えて、その規則通りに適切に情報を整理しながら出力していくのは苦手である、ということが見て取れます。
また、大問Ⅰの基礎知識や用語の問題の正答率が予想より低かったことについては、今年は初回だったので、来年以降は過去問対策をするので変わってくるとは思いますが、予想した正答率とはかなり異なるものがありました。

その特徴的な大問Ⅰの問題がこちらです。「記録メディアのうち、ハードディスクに代わる補助記憶装置として利用されているフラッシュメモリを用いた補助記憶装置のことを、アルファベット3文字で何というか」ということで、ここにいらっしゃる先生方は、これのどこを間違えるか、と思われますよね。
正解はSSDですが、正解率は3分の1程度です。USBは誤答として想定はしていました。「USBメモリ」まで書ければ×にはできないですが、ただのUSBでは誤答です。
もう一つ頻度の高かった誤答にCPUがあって、その他の解答にGPU、HDD、IoT、FMDなどなど。とにかく情報の教科書に出てきたアルファベット3文字で覚えているものを書いておこう、というように感じました。

次に電子メールの問題です。「ToとCCとBCCをつけて送ったらちゃんと届きました。CCで受け取った人は、どの人のアドレスを見ることができますか」という問題で、当然BCC以外は全部見えるはずですが、この正答率が30%と、やはり低くなっていました。
また2進数は、「情報」の授業で学んでいると認識しています。「必要なビット数がいくつか」「16進数の文字は何を使うか」「10進数から2進数に変換したときに長さは有限で済むか」といった設問に対して、「正しいものを全部答えなさい」という形式だったことがあるかもしれませんが、これも正解率は42%で決して高くはありません。大問Ⅰは基礎知識を問う小問集合で、ある意味残念ですが、試験問題として分別能力はあった、ということになります。

一方で、プログラムのトレースの問題2題は、実際のプログラムをそのまま見せて答えさせる問題でした。左側はいわゆる二分法(区間を2つに分けて解を求める)の問題、右側は単純なループの問題ですが、これについては両方正解できた学生が43%で、意外によくできていたと思います。

まとめとして、「情報」を選択科目に導入した1年目としては、予想より多くの受験生が選択してくれたことから、おおむね成功であったと理解しております。



