
東京女子大学・太田 邦史 学長インタビュー
6.女子大であることに価値がある ―東京女子大が育てるリーダーとは
リーダーになることと、リーダーシップについて学ぶことは同義ではない。リーダーシップには、サーヴァント・リーダーシップやフォロワーシップなどさまざまな種類がある。リーダーシップ教育は、自分が将来リーダーになったときはもちろん、リーダーを支える立場に置かれたときも役に立つ。東京女子大学では、深い教養を持ち、マネジメントの視点からリーダーシップを発揮できる女性を育成する。
ーー リーダーシップのあり方の一つとして「奉仕するリーダー(サーヴァント・リーダー)」というものもあると思いますが、具体的にどういった人物、どのような女性を育成することを目指しておられるのか、まとめていただけますでしょうか。
太田:一言でいうと、しっかりとした教養に基づき、落ち着いて物事を自分の頭で考えられる、そういう人物です。もちろん、必ずしもすべての人がリーダーになるわけではなく、その必要もないと思うんですが、それは「リーダー」の定義にもよります。リーダーを広くとらえるならば、リーダーになる人は当然、教養に基づいて決断ができる人、人格的に成熟し、人を貶めたり嘘をついたりしない人。そして、品性と賢さがそこに伴っている人。そのような根本的なところが身についた人がリーダーたりうるのだと思います、その意味でのリーダーなら、誰もが目指すべき姿ということになるでしょう。大学は、こうした素養を育てる場でありたいと思います。
そのような教育を実現する場として、キャンパスの中で安心・安全に学びに集中できる環境を作っていくというのが、女子大学としての意義を持ち続ける重要なポイントなのかなと思っています。
ーー なるほど。参考になるケースなどはあるのでしょうか。
太田:アメリカのウェルズリー大学(Wellesley College)という、ファイブ・シスターズの名門女子大学(The Five Sisters)があります。卒業生は、各界で女性リーダーとして活躍しており、マデレーン・オルブライト(アメリカ初の女性国務長官)やヒラリー・クリントン(元国務長官)なども輩出しています。卒業生の強いネットワークと「美しいキャンパス」で有名です。
ーー 美しいキャンパスと言えば、東京女子大学のキャンパスも美しさで有名ですね。
太田:東大とは、綺麗さの質が違いますね。非常に綺麗なまま維持されているのです。東大駒場キャンパスにも歴史があり、建築物も立派なものがありますが、なぜか壁の上の方に「足跡」がついていたりするんです(笑)。
ーー 「女子大の存在意義」はどういうところにあるということになりますか。
太田:やはり東京女子大学としては、いろいろな大学と連携しながらも、「女子大学」として維持されていくことそれ自体に価値があると思っています。ニーズは必ずありますので、女子大としての価値をきちんと守っていければと思っている次第です。
ーー 女子大の先生に「女子大の存在意義」を聞くと、ほとんどが同じ答えをされます。「日本はジェンダーギャップ指数が先進国の中でも最下位にある。これがなくなるまでは女子大の意義はある」と。そうなると、「日本のジェンダーギャップがなくなったら女子大は不要になる」ということにもなります。つまり、積極的な意味での女子大の価値は、なかなか定義が難しいと思うのです。
一方、太田学長は、米国の女子大を例に挙げながら、女子大学であることそのことに価値があると。そのようにまとめられました。
太田:女性に特化した教育っていうのは、どんな時代でもとても「贅沢な教育」として残るのではないかと思うんです。それは、独自の豊かな学びが約束されているという意味です。
ーー 米国には、男子校ならぬ「男子大学」もありますよね。
太田:東大は女子比率がやっと2割に届いた段階で、「男子大学」のようなものだったんですけどね(笑)。そんな中で女性向けの取り組みを行なうと、男子学生から苦情が来たりするので、バランスを取るのがとても難しかったです。ところが、女子大なら、そんなことは気にする必要はない。女性を100%応援できるプログラムを、全学生に対して行える。
ーー 最近は、女子の「理工系(理系)」人材を増やそうと一部の共学校で「女子枠」をつくったりしていますが、そもそも日本では、「数学が苦手だから理系に進学しない」という女性が高校生くらいから出てきてしまい、どんなに政府が旗振りをしても、なかなか増えてこないという現実もあります。どうご覧になっていますか。
太田:女性だから数学が苦手っていうのは、本人や周囲の大人の思い込みにすぎないでしょう。私の知る女性研究者の中にも数学が得意で数理生物学のようなことができる人がいます。数学が苦手、という意識が実態としてあるとしても、それはやはり社会的につくられた何かではないかと思います。
ーー 周囲からの刷り込みによる、本人の思い込みということですね。
太田:そういう何かがあるんじゃないかと思っています。大学に進学する女性の関心分野として、「医療系・医学系」は人気が高まっています。ですから、いずれは理系全体や数理の分野にも関心は波及すると見ています。アメリカでは、どの一流大学も理系の半分くらいを女性が占めていますので、日本でも多くの女性が理系の進路を選ぶようになるのは、時間の問題だと思います。
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