関西国際大学・濱名篤学長インタビュー 「偏差値」から「教育の質」へのパラダイムシフト

8.これからの国際化/大学教育でのAI活用について

――さて、留学生の話のところで聞きそびれましたが、今後の大学経営において、海外の大学との連携も重要なテーマです。欧米の模倣ではない、アジア圏との競争・共生が重要になると思いますが、いかがですか。

濱名: 日本はすでに「防災先進国」という独自の強みを持っています。我々はACP(Asian Cooperative Program:https://www.kuins.ac.jp/international/acp/block.html)を通じ、インドネシアやマレーシアなど15の有力大学に対し、兵庫の震災経験をベースにした「セーフティーマネジメント(防災)教育」を輸出しています。これは日本の教育コンテンツがアジアのハブとなる「教育ソフトパワー」の行使に他なりません。

――最新の取り組みとして「大学の世界展開力強化事業」での国際共同カリキュラムも注目されています。

濱名: はい。本学も「Venture Makers(VM)」Innovation Dojo(イノベーション道場)と連携した起業家育成プログラムを展開しています。これもKUISs単独ではなく、国内では神戸芸術工科大学や宮崎国際大学とプラットフォームを組む「地域内×地域間」のハイブリッド連携で挑んでいます。(https://innovationdojo.com.au/articles/global-entrepreneurship-mindset-program2022-jp)

――生成AIなどのテクノロジー活用についてはどのようにお考えですか。

濱名: もはや、生成AIを「不正防止」の文脈で語ることはできません。生成AIの活用を前提とした「モデル授業」をいかに構築するかが本質的な課題です。大学教育のAI活用やDXが語られていますが、教育方法と評価の徹底的な可視化の方向での活用を構想することが、中小の私立大学におけるあり方の一つだと思います。


9.教育関係者や受験生に伝えたいこと

――今後の展望と、教育関係者や受験生へのメッセージをお願いします。

濱名: 日本の人口減少は待ったなしです。今やタイやベトナムも急速に少子化が進んでおり、東南アジアから安易に留学生を呼べる時代も終わりつつあります。 これからは、神戸という街がいかに魅力的な教育拠点になり、アジアのハブとして機能できるかが問われていると考えます。この街で、外国人と共に学び、共に働き、共に暮らす。こうしたモデルが構築できなければ、日本の社会機能そのものも維持不可能になるのは必至です。ならば、我々はそれを「本気」でやる大学でありたい。

教育関係者の方々には、今、目の前にいる学生がどう変化したか、その成長を可視化し、責任を持つ覚悟が問われています。情報を共有することは、認識を共有する第一歩です。共に新しい教育の時計を動かしていきましょう。

そして、受験生や保護者の皆さん。 関西国際大学は、自分の「伸びしろ」を実感したい人のための場所です。最初からやりたいことが決まっていなくても構いません。多様な仲間と揉まれ、私の授業を受けて「自分は何も知らなかった」と気づくところから、本当の学びが始まります。 偏差値という物差しを捨て、「やればできた、もっとできる」という自己効力感(Self-Efficacy)を手に入れる。そんな4年間を過ごしたいなら、ぜひ我々の門を叩いてください。

(記事終わり)


学校法人濱名山手学院理事長 関西国際大学教授 学長 濱名 篤 氏 プロフィール

専門:教育社会学、高等教育論

主な経歴:1956年、兵庫県生まれ。1987年、上智大学大学院文学研究科社会学専攻博士後期課程単位取得満期退学、2005年、関西国際大学学長に就任。2006年、学校法人濱名学院理事長兼任(2020.4.1まで)。2020年、学校法人濱名山手学院理事長・学院長。
上記の他、2005年より文部科学省大学設置・学校法人審議会(大学設置分科会)特別委員、中央教育審議会臨時委員を務め、現在は学校法人運営調査委員。その他、日本私立大学協会理事、(一社)学修評価・教育開発協議会理事長、(一社)大学都市神戸産官学プラットフォーム監事、(一社)大学コンソーシアムひょうご神戸理事、国際大学間の未来ネットワーク副会長を兼務。(一社)大学教育学会理事、(一社)日本高等教育学会副会長・理事。

主な著作等
『士族の歴史社会学的研究』(名古屋大学出版会)
『大学改革を成功に導くキーワード 30「大学冬の時代」を生き抜くために』(学事出版)
『初年次教育の現状と未来』(世界思想社)
『大学の質保証とは何か』(エイデル研究所)
『学修成果への挑戦 地方大学からの教育改革』(東信堂)
『進化する初年次教育』(世界思想社)
『実務家教員の理論と実践』(社会情報大学院大学出版部)など

インタビュー・記事執筆:原田広幸(KEI大学経営総研)、三品 健(KEI大学経営総研)

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