奈良女子大学 高田 将志学長インタビュー[前編] -大学院に見る「国立女子大」の使命-

奈良のまちはキャンパスの「借景」

古都・奈良に立地する大学であることは、本学の大きな魅力であると感じています。

「古都」と聞くと京都を想起される方も多いと思いますが、個人的に、京都には「都市化された古都」という印象があります。加えて、確かに古都に違いないものの、そこに息づく文化にはどこか現代的な雰囲気が含まれているようにも感じるのです。

一方、奈良は、京都以上に「古都らしい古都」です。どれほど時代が移ろうとも変わらない、非常に落ち着いた「いにしえのみやこ」の空気が、この地には息づいています。連綿と受け継がれるその空気には文化的な色が深くあらわれ、それが古都の「質」としてじっと根付いているところに、奈良の魅力があると感じます。

その関係性は、私の中でまだうまく整理しきれていません。けれども、そうした奈良の雰囲気に心惹かれ、本学を志望してくれる学生が毎年いるのは確かです。また、女性が比較的安心して生活できる街であることも、女子大が立地する土地として、とても良いことだと思います。このような落ち着いた環境で学ぶことができる点は、本学の魅力の一つと言ってよいでしょう。

奈良女子大学のキャンパス(空撮)

奈良女子大学のキャンパス(写真提供:奈良女子大学)


以前、本学を訪れた海外の研究者にも「街は小さいけれど、どことなく雰囲気がオックスフォードに似ている気がする」と言われたことがあります。その時、「そんな大層な」と謙遜したくなる一方で、「その感覚は分かるな」と思う私も確かにいました。おそらく都市部の大学で、この雰囲気を感じることはなかなか難しいでしょう。

ただし、本学は小規模な大学のため、本学だけで「大学街」のようなものを形成できているわけではありません。そうした雰囲気を感じてくださった背景には、奈良という街全体が本学の「借景」として、キャンパスの機能を一部担ってくれている側面があるように思います。

本学が立地するのは、東大寺や興福寺、春日大社をはじめとする寺社仏閣、広大な奈良公園、種々の文教施設・文化施設などを徒歩圏内に含む地です。本学を囲むそれら名勝・旧跡、文化財が、大学のキャンパスとしての役割をも担い、おっしゃったような「大学街」の空気を、本学とともに作り出しているのではないでしょうか。

はい、とても恵まれた環境にあると感じています。

奈良女子大学のキャンパスと若草山の山焼き

奈良女子大学のキャンパスと若草山の山焼き(写真提供:奈良女子大学)


「せっかく奈良に来たのだから、生活圏以外にも奈良のことを知って4年間を過ごしてほしい」という思いのもと、文学部を中心に、奈良県にまつわるような授業も開講しています。

もともと奈良のことをよく知る学生も中にはいますが、近畿圏外出身者はもちろん、近畿圏内出身の学生でも、奈良についてよく知らない人は意外と多いです。また、かつて、同僚が授業で学生に、「自分の一週間の行動を地図上にマッピングしなさい」という課題を出したところ、大学と自宅とコンビニの三角形しかできなかった学生が数名いたといいます。それはあまりにもったいないです。

せっかく大学4年間を奈良の地で過ごすのですから、奈良を知り、その良さも感じながら、充実した学生生活を送ってもらいたいと思います。これは本学の教育において、今後も変わらず大切にしていきたい点です。本学には「借景」として、奈良の街があるのですから。

【番外】
その昔、私が大学近辺に自宅を建てる際、土地が手狭に感じて、「こんな狭い場所に家が建つのですか?庭をつくるスペースもないのでは?」と業者の方に尋ねたところ、「十分建ちます!それに、庭なら奈良公園があるじゃないですか!」と怒られたことがあります。これが大学にも共通して言える話だと気が付くのは、もっと後の話です。


奈良女子大学 高田 将志 学長

プロフィール:
1959年生まれ。富山県出身。
1983年 東京大学理学部地学科卒業。1985年 同大学大学院理学系研究科地理学専攻 修士課程修了(理学修士取得)。1990年 同博士課程 単位修得退学。専門は自然地理学、地形学。
東京大学大学院理学系研究科研究生、東京大学総合研究資料館非常勤研究員を経て、1995年 奈良女子大学文学部に助教授として着任。2008年同教授。2012年 同大学研究員教授。以降、同大学において附属中等教育学校長、共生科学研究センター長、大学院人間文化研究科長、大学院人間文化総合科学研究科長を歴任し、2024年に学長に就任。現在に至る。
また、1995年7月~1997年3月 第38次南極地域観測隊員、2001年4月~2002年3月 国立極地研究所助教授研究系併任の経歴を持つ。

著書:
● 高田将志 監修:『3D地図でわかる日本列島地形図鑑』,成美堂出版(2019)
● 岡田篤正・東郷正美編(岡田篤正・東郷正美・田中真吾・植村善博・鈴木康弘・高田将志・相馬秀廣分担執筆):『近畿の活断層』,東京大学出版会(2000)
● 田代 博・藤本一美・清水長正・高田将志:『山の地図と地形』,山と渓谷社(1996)


インタビュー:満渕匡彦(KEI大学経営総研 上席研究員)・原田広幸(同 主任研究員)・山口夏奈(同 研究員)
執筆・編集 :山口夏奈(同上)

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