
奈良女子大学 高田 将志学長インタビュー[前編] -大学院に見る「国立女子大」の使命-
■ 国立女子大が果たすべき使命 -大学院が担う役割-
――貴学は西日本で唯一の国立女子大学です。「国立女子大」としての使命を果たすべく、貴学は今後どのようなことに取り組む必要があると考えますか。
「国立大学」として研究力をさらに高めるべく、大学院をいっそう充実させていくことは当然必要です。さらに「女子大」として、女性のキャリアを支援する体制を絶えずアップデートし、分野を問わず、学生・研究員・教員が安心してキャリアを重ねていける環境を提供し続けていくことも重要であると考えます。
本学は前身である奈良女子高等師範学校時代から今日に至るまで、女子に学部相当の教育を施すという使命を担ってきました。これは今後も継続して取り組んでいくべき、とても重要なミッションです。しかし、これからはそれに加えて、大学院での研究・教育にも大きなウエイトを置いて取り組んでいく必要があります。
「大学全入時代」と言われて久しい昨今、特に国立大学において、大学院がこれまで以上に重要な意味を持つようになりました。一般的に、国立大学は私立大学以上に、研究面での成果が期待されています。そして、その「研究」は、主として大学院で行われるものです。学部でも卒業研究などはありますが、それらはあくまでも「研究の助走」に過ぎません。本格的な「研究」と言えるのは、やはり大学院以降です。加えて、理系分野では、教員が行っている研究の実験サポートを大学院生が担当している場合も多く、その意味でも、良い研究には大学院の充実が不可欠であると言えるでしょう。
また、高度な専門性を有する女性人材を社会に輩出するという観点からも、本学の大学院は非常に重要な役割を担っています。
今日、大学進学率に男女間の差はほとんど見られなくなったものの、大学院進学率となると、そこには未だ10%近く差があります。特に理工学分野において、女性の大学院進学率はまだまだ低いのが現状です。そこには先に述べたような、「環境整備」の不十分さも関係しているように思います。性差由来のプレッシャーを感じることなく、またライフイベントを経てもキャリアを継続していける環境は、女性が研究者の道を歩むうえで非常に重要です。これらに鑑みたとき、「国立女子大」として、本学の大学院が果たすべき役割は多く残っていると感じています。
――「女子大なんて時代遅れ」などという意見も一部では聞かれますが、大学院に目を向けると、女子大の担っている役割の大きさが明確に見えてきたように思います。
大学院にフォーカスすると、「時代遅れ」などと言っている場合ではありません。女性研究者の少なさ、女性の大学院進学率の低さを、果たして共学の大学だけで是正していけるでしょうか。残念ながらそれが実現できるほど、日本の社会は未だ成熟していないように思います。
「大学院での研究・教育において、女子大はまだまだ重要な責務を担っている」国立の女子大学であるがゆえに、その意識を強く持っています。女性が安心して自身のキャリアを見据え、高度で専門的な研究に没頭できる場として存在すること。そして、そのさらなる充実を図っていくこと。本学が「国立女子大」として果たすべき使命は、今、ここにあると認識しています。

奈良女子大学 正門(写真提供:奈良女子大学)
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