
情報処理学第88回全国大会レポート「新課程『情報入試』― 2年目の共通テストと広がる個別入試」パネルディスカッション
共通テストの導入で、「情報Ⅰ」をきっちり教えるようになったが……
安田先生:
私は大学で情報系の学部で教えていて、しかも「情報」の個別試験を実施している立場から、どのような教育が高校で行われているのか、そして共通テストが実施2年目になりましたが、それによって授業はどのように変わったかを知りたい、という思いがあります。今日は、高校の現場で今起きていることや、現場でどのような授業をされているかということを、大学の先生方と共有することを目標としたいと思います。
まず、ざっくりと最近の高校現場で起きていることをお話しください。
太田先生:
岡山県は普通科高校が多いので、共通テストの対策としてよくあるのが、3年生で『情報探究』という学校設定科目を設置して、実は問題演習を中心に行う、というケースです。
また、共通テスト導入による変化として多かったのは、本校もこれにあたるのですが、文部科学省のWWL(World Wide Learning)の指定を受けている学校は、教育課程上の特例が使えます。本校も、これまでは「情報」の授業(2単位)を1単位減らして、その分をいわゆる「総合的な探究の時間」に読み替えていました。この「情報」の読み替えはSSH(Super Science Highschool)の学校でも、多くの学校で行われていました。
もちろん文科省の指導としては、「読み替えを行うのであれば、その中に『情報』の履修内容を全て含む」こととなっていましたが、実際に対応しているか不明な学校が多かったと思います。ところが、共通テストに「情報Ⅰ」が入ってきたことで、本校も読み替えをやめて、「情報Ⅰ」をきちんと2単位を設置することになりました。他の学校でも、このようなケースが多いようです。

写真提供:情報処理学会
安田先生:
ありがとうございます。実は私も、SSHなどで授業の読み替えが行われているというのは知りませんでした。入学してくる学生に「情報」をどのように学んだかと聞くと、「やっていない」という学生が一定数います。20年ほど前に、高校の「履修漏れ」が話題にもなりましたが、今でもそんなことがあるのかと思っていたら、そうではなくて、いろいろな背景があるのですね。やはり大学側も、高校でどのように教えられているのかいうことは知らなければいけないな、と改めて思いました。
ここからは、もう少し長い視点で、共通テストが導入されたことで、高校はどう変わったか、あるいは変わりはないか。教員採用はどうなっているのか、今どのような課題があるかについてお聞きしたいと思います。
太田先生:
私は岡山県の教員になって11年ですが、もともと民間企業の出身で、しばらく非常勤講師をしていました。私が採用試験を受けた年以降は、今のところ毎年1人ずつ採用があり、1人の採用枠に10倍後半から20倍前半程の倍率です。
実は、岡山県では情報科の教員でも情報学がご専門の方ばかりではありません。私も機械工学の出身ですが、私以外にも農学出身の方や専門学校出身の方などさまざまで、特にもともとは商業が専門の方が多いです。そのため、採用後の課題としては、入試の指導方法を共有していくことや、今回のような教員自身の勉強の機会に、どんどん出られるようにすることだと思います。これについては、私自身が率先して引っ張っていこうと思っています。
もう1つ深刻な問題として、特に公立高校では大規模校が減っているので、担当する持ちコマ数の関係で、専任教員の配置ができないということがあります。現実的には、1学年6クラス以上の学校でないと、情報科の専任教員を置くのは難しくなり、地方の高校では、配置できるところが限られることになります。岡山県は、教員採用の面では充足していますが、今後どうなるのかというのが気になるところです。


