
文部科学省、私立大の公立化検討における留意事項を通知 「公立化以外の選択肢」も比較検討求める
文部科学省は7月14日、各地方公共団体の長や学校法人理事長等に向け、「私立大学の公立化を検討するうえで留意すべき事項等について」と題する通知を発出した。地方の私立大学における公立化の事例が見られる中で、大学の存続だけを目的とするのではなく、「地域へ貢献する公立大学」という理念に基づく丁寧な検討を求めている。
近年、18歳人口の減少に伴う定員充足率が悪化により、経営難から教育研究の質を維持できない大学が出てくることが危惧されている。そのような状況を受け、2025年2月の中央教育審議会答申(いわゆる「知の総和」答申)では、高等教育機関の再編・統合、縮小、撤退等、「大学の規模の見直し」が必要と示された。こうした中、地方では私立大学が自治体等に設置者を変更し、公立化する事例が続いている。
私立大学の公立化は、2009年の高知工科大学が最初の事例である。その後も名桜大学(沖縄県)や福知山公立大学(京都府)など、私立大学の公立化は続き、2026年4月には東北公益文科大学(山形県)が公立化した。これまでに13の私立大学が公立化している。
公立大学には、地域課題の解決や地域活性化、人材養成といった役割が期待されている。しかし文科省によれば、私立大学が公立化した場合、地域内からの入学者や地域内へ就職する人の割合が低下する傾向も見られ、人材を地域に定着させることの難しさが浮き彫りになっているという。このことを踏まえ文部科学省は、今後の私立大学の公立化に係る検討においては、真に地域に貢献するものとなるべく、地域の高等教育資源の重複感の解消や地域の高等教育機関の機能を最大化するとともに、地域の人材需要や将来の運営の見通し等に留意するよう求めた。
■ 地域人材の需要を踏まえた適正規模の検討
通知では、地域の将来推計人口、進学者数や産業別就業者数の見込み、学問分野ごとの定員等を踏まえ、地域の人材需要に応じた適正な規模を検討することが求められている。
また、「大学の単なる存続を目的とした考えに立つのではなく」、地域を支える人材を育成し、地域の発展をけん引する理念を共有することが重要であるとしている。検討にあたっては、高校教育等との連携を図ることや、「地域構想推進プラットフォーム」などの協議体を活用し、当該地域の高等教育を取り巻く状況や課題、将来の人口需要等について、地域内の他の高等教育機関と認識を共有し、産業界とも議論することが推奨されている。
■「撤退」も視野に。複数のケースを想定した財政シミュレーションを要請
経営面・教学面で一定の質が確保できない私立大学については「学生保護の観点及び高等教育全体への信頼確保の観点から撤退を進める必要があり」、撤退しない場合でも他の高等教育機関との連携や再編・統合、縮小を検討することが求められると明記された。
その上で、私立大学の公立化検討にあたっては、「公立化以外の選択肢も十分に比較検討すること」を求めている。加えて、財政シミュレーションを実施する際には、定員充足率別など複数のシミュレーションを行うことや、施設・設備の維持管理および更新に係る中長期的な経費の見込みを必ず踏まえ、将来の運営見通しを立てるよう求めた。
詳細は下記リンク先にて確認できる。
文部科学省|私立大学の公立化を検討するうえで留意すべき事項等について(通知)
執筆:山口 夏奈(KEI大学経営総研 研究員)


