広島市立大学 前田香織学長

広島市立大学 前田 香織理事長・学長インタビュー

地域とのつながりを着実に築く中で連携の芽を育てる

前田:県内では、尾道市立大学に芸術文化学部があります。

本学の芸術学部の特徴としては、美術学科とデザイン工芸学科を置いていて、美術学科には油絵、日本画、彫刻の3つの専攻があり、彫刻では、石も木彫も金属も、と網羅しています。
一方、デザイン工芸学科は、グラフィックやプロダクトデザインとアニメのような映像表現、染織や漆工芸と非常にカバー範囲が広く、開学当時は、設備も西日本一と言われていました。この規模があるのは、西日本だと京都市立芸術大学くらいでしょうか。

開学当時の芸術学部の先生方は、ほとんどが東京藝術大学から来ていただいていました。当時は、この辺りに芸術学部自体がなかったので、学生も浪人生がすごく多かったですね。

前田:進路という点では、芸術学部の学生は、いつかは作家になりたいと思っている人も多いでしょうが、すぐにはそれも難しいので、教員になったり、広告会社に就職したりする人が多いですね。最近では、IT企業でもデザイン部門を持っているので、そういったところに入っていく人もいます。開学した頃は、多くの大学の芸術系の学部では、学生の就職先について考える必要性を認識されていなかったこともあると思いますが、今は違います。この30年の間に大きく意識を変えないといけない状況に変わってきました。

地域貢献という意味では、芸術学部はある意味分かりやすい例がたくさんあります。地域の自治体や企業からデザインを頼まれたり、地域おこしのプロジェクトに先生や学生が参加したりということがよくあります。このような活動を通して、町の人たちと意見を交わす中で、学生たちも地域の目線を身に付けられています。

前田:学部を超えた学生同士の影響という点に関しては、本学の特徴的な授業として、「3学部合同基礎演習」があります。これは1年次前期に開講される必修科目で、3学部の学生10数名が学部を超えて少人数クラスを作り、そこに先生が1人ずつ付いて、与えられた課題をグループワークで解決する授業です。

そこでは、学部の専門性を超えた多様な知識や価値観を身に付けることが可能です。同じ学部の人だけで実施する数回を除き、3学部の学生間でグループワークやディスカッションしたり、最後にプレゼンをしたりしますが、そういうときは、国際学部、芸術学部の学生がよく話すし、リーダーになることが見られますね。

また、大学祭の実行委員会やサークル活動では、それぞれの専門の強みを生かして、役割分担を行っているようです。

その他の本学の特徴的なカリキュラムとしては、「地域志向特定プログラム」という、全学共通系科目と専門教育科目によって構成する地域志向型のカリキュラムがあります。
ここでは、地域に関してさまざまな視点から学びを深め、先生方と一緒に地域ぐるみで地域課題の解決をしたり、実際に現地でいろいろ体験させてもらったりしています。

加えて、本学の産学連携では、研究だけでなく教育にもとりこみ、産学連携でIT人材を育てる「産学連携教育」を実施しています。情報科学部・情報科学研究科が正課としていくつかの授業を開設しており、その中には企業の方と一緒にプロジェクトベースで地域課題の解決を目指すものもあります。これらの授業の最終回には、企業の方にも来ていただいて、合同で成果発表会を開催しています。

なお、本学の産学連携に関する取り組みは、こうした産学連携教育の枠組みで単位の認定をしている授業として実施するものの他、「マツダ・広島市立大学芸術学部共創ゼミ」など正課外で行うタイプなど、いろいろあります。
地域に貢献する広島市立大学 | 広島市立大学

前田:例えば、ちょうどこの3月に修士を修了した学生が「CocBan(コクバン)」という地域活性化のための掲示板アプリを作りました。これは、町内会や自治会の活動が下火になっているのを何とかしよう、という問題意識からスタートしました。その解決のために、お年寄りでも使いやすい回覧板のようなアプリを作って、それを提供する会社を立ち上げたのです。今、市内の団地などで大規模導入も始まっています。

前田:全学部で、その時々でトレンドになっている話題をテーマにした公開講座を、ずっと行っています。広島平和研究所でも、継続的に平和の問題を扱った講座があります。

また、情報科学部では、体験型の公開講座もやっていますし、子ども向けや中高生向けの体験型講座もあります。芸術学部の講座では、実際に作品を指導してもらうというものもあって人気が高いようです。

本学には広島市中心部にサテライトキャンパスを持っていますが、小規模のセミナーなど以外は、公開講座でもできるだけ大学のこのキャンパスまで来ていただいています。地域の方でも、ふだん大学のキャンパスの中に入る機会はあまりないので、「大学に行ってみたい」という人が多くいます。キャンパスに来ていただくことで、本学を知っていただくきっかけにもなっています。
公開講座 | 広島市立大学

学内の様子(大学提供)

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