
大学教育のデジタル活用へ向けて:日米の違いからの気づき
三菱商事はG検定を管理職への昇格要件に
原田:G検定は、文系出身でも合格できるものでしょうか?
竹川:G検定は文字通りジェネラリストとしての知識を問うものですから、コードが書けなくても大丈夫です。もちろん、書けた方が中身がわかるので、理解は早いと思いますが、そこは求められていません。
「AIにはこういった技術があって、このような事例がある時には、こういう法律やプライバシーに配慮しなければならない。AIプロジェクトではこのような進め方があります」といったことを勉強してもらうことになります。
原田:G検定は、既存のITパスポート試験などとはどのような違いがありますか?
竹川:例えば、有名なITパスポート試験は、ITやシステム全般のベーシックなところを広く浅くみるような資格ですが、G検定は、AIの分野に限って、より深く広く学ぶということになります。経産省がオブザーバーに入っているデジタルリテラシー協議会では、ITパスポート試験と、G検定、および、データサイエンティスト検定(DS検定)の3つが「デジタル人材の基本のリテラシーになる」と述べられています。 G検定がAI分野のリテラシーの標準形として位置づけられるところまでは来たかな、と思います。(デジタルリテラシー協議会)
先日、三菱商事が5000人以上の社員にG検定を受けさせる、という報道が日経新聞でありました。その後、慶應に行ってその話をしましたら、三菱商事に就職したい学生はさらにモチベーションが上がるわけですね。そうなると、今後は人気のある企業に就職したい学生が、G検定を取っていく、という動きも出て来るのではないかと思います。
原田:理系でなくて、デジタルに弱い人がG検定に合格するためには、どのくらい勉強したらよいのでしょうか。
竹川:公式に言われているのは、30~50時間程度です。私たちが学生や社会人の受講生と接している中で見ていると、実際には、平均30〜40時間ですが、多い方でも70~80時間の勉強時間を確保して、2か月くらい集中的に勉強すれば、十分に合格レベルに達することができるかと思います。今、東北大学でも慶応でも、大体2か月くらいで講座を行なっていますから、クォーターより短い期間で目指せるということですね。
原田:大学としてG検定のための準備講座を設置したい場合は、例えば御社のオンデマンドの講座を受講するとともに、参考書籍を購入して勉強する、ということになるのでしょうか?
竹川:公式テキストは、ほとんどの人が購入します。G検定の準備のためのいろいろな講座がありますので、手っ取り早く公式テキストと、世の中にあふれるYouTubeで勉強して合格してしまう、という人もいるかもしれません。
しかし、大体の人は何らかの講座やアプリのヘルプを受けていると思います。その中で、私たちのプログラムを使っていただく、ということになります。さらに、大学生個人ということになると、これまで全国で30~40大学の学生たちが使っている、という実績があります。
原田:一方、「E資格」はエンジニア向けなのでよすね。
竹川:そのとおりです。「E資格」の方は、プログラミングの基礎知識や、高校数学をきちんと学んだ土台があった上で、100~150時間、時間をかけてきちんと勉強してもらうことになります。
E資格については、私たちは「自動車運転免許方式」と呼んでいますが、自動車教習所のように認定プログラムを修了して初めて受験資格を得られる仕組みになっています。その認定プログラムのうちの1つがzero to oneの教材です。計100〜150時間の学習により修了認定が得られ、E資格の試験を受ける資格がもらえることになります。これもオンラインの講座です。
| 参考記事(別ページに推移します): ・東北大学はなぜ「G検定」「E資格」に取り組むのか―「東北大学ビジョン2030」を具体化するCDSプログラムとは ・G検定合格率93%〜未来のAI人材を輩出するために、慶應義塾大学・AICの新たな挑戦 |
zero to one 東京オフィスにて取材
竹川 隆司氏:株式会社 zero to one(ゼロ・トゥ・ワン) 代表取締役CEO
野村證券にて国内、海外(ロンドン)に勤務。2006年ハーバード大経営学修士(MBA)。2011年より米国ニューヨークにてAsahi Net International, Inc.を設立。同社代表取締役として、高等教育機関向け教育支援システム事業のグローバル化を推進。2014年より一般社団法人インパクトジャパンにて、エグゼクティブ・ディレクターとして、カタールフレンド基金の支援を受けた、東北での起業家育成・支援プロジェクト「INTILAQ」(インティラック)を主導、仙台市にイノベーションセンターを設立。2016年1月、INTILAQ東北イノベーションセンターに登記第一号企業となる「株式会社 zero to one」を設立。同年、日本最大のMOOCプラットフォームgaccoにて、初めての地方創生コースを開講。
インタビュアー:原田 広幸(KEI大学経営総研)
編集:小松原 潤子(KEI大学経営総研)


