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  • 国際紛争、大規模災害、少子高齢化など、厳しい状況の中で新しい道を拓くための人材育成・社会貢献に資する大学への期待は大きい。真摯に改革に取り組む大学トップの声を紹介する。

佐賀大学 兒玉 浩明学長インタビュー[前編]

「佐賀県の教育の支柱」 その使命を背負って【独自記事】

佐賀県唯一の国立大学として県の教育を牽引する佐賀大学。地域から大きな期待を寄せられるその大学のトップとして、あらゆる改革を推進するのが兒玉浩明学長だ。前編では熊本大学との共同教員養成課程設置の背景を中心に、佐賀大学が目指すこれからの姿と、兒玉学長の教育に懸ける強き意志に迫ります。


教育学部の「フルスペック機能」の維持――熊本大学との共同教員養成課程設置①

第4期中期目標・中期計画の策定に向けて発出された、文部科学省の「国立大学改革方針」において、「教員養成系大学・学部の高度化」と「他大学との連携・集約」が「取り組むべき方向性」として示されました。このことを踏まえたとき、本学のような地方国立大学では、何よりもまず、教員養成系学部における「フルスペック機能(義務教育期間中の全教科の教員免許が取得可能な体制)」の維持が重要となります。これが、共同教員養成課程の設置を決めた大きな理由の一つです。

本学が教育学部の「フルスペック機能」の維持にこだわるのには、地域特有の事情があります。近隣県では、教員免許を取得できる大学が県内に複数設置されていますが、佐賀県の事情はそれらと大きく異なるからです。もちろん佐賀県内でも、教員養成を行なっている大学は複数あります。しかしその中で、幼稚園から高校、さらには特別支援学校教諭までをカバーし、なおかつ全教科的に免許の取得が可能な体制が整っているのは、佐賀大学だけなのです。

そのため、本学の教員養成課程を現在の規模で維持できなくなった時や、専門の教員を配置できなくなった場合には、学校現場を担う教員が輩出できなくなるだけでなく、現場の教員の研修を担当する専門家もいなくなってしまいます。佐賀県の教育を守るためにも、最低限、義務教育期間の主要科目の免許はすべて取得できる体制を維持せねばならない。そうした使命感を我々は強く抱いています。 

他方、近年の九州地方は、特に小学校教諭の定年退職者が多い時期と重なっています。それに加えて、特別支援学級の増加にも対応しなければなりません。つまり、教員の確保が喫緊の課題となっているのです。

佐賀県でもここ数年、毎年200名近い小学校教諭の採用があります。そして、この状況はもうしばらく続くため、今はとにかく教員をしっかりと養成していかなければなりません。 しかし、10~20年経つと、退職教員数の減少や少子化に伴うクラス数の減少により、今度は新規採用がほとんどない時期がやってきます。

このことに鑑みると、本学単独で教員養成を続けていくことが今は可能ですが、近い将来、現在の規模の教育学部を維持できなくなるのではないか。私たちはこの点を懸念していました。 そのため、他大学と連携することで、持続可能な「フルスペック」の教員養成機能を確保したいと思ったのです。


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