
共立女子大学・共立女子短期大学 学長 佐藤雄一氏インタビュー:変革する社会における「共立リーダーシップ」の真価と、女子教育の未来
8. 組織を動かす「観察」と「自己理解」:日本ハム新庄監督から学ぶ経営のヒント
巨大な組織を運営するリーダーとして、佐藤学長は意外にもプロ野球・日本ハムファイターズの新庄監督の采配に注目する。その本質は「一人ひとりを徹底的に見る」こと。事務職員一人ひとりにまで及ぶリーダーシップ研修や、3年サイクルの自己理解のプロセスが、組織の多様性と競争力を支えているという。
インタビュアー: 学長という重責を担う中で、理想とする組織運営のモデルはありますか。
佐藤: 私は、実は野球が好きで、日本ハムの新庄監督の采配を興味深く見ています。彼は選手一人ひとりを本当によく観察し、適切なタイミングで力を発揮させる。大学も同じです。教職員の特徴を把握し、活躍の場を整えることが私の役割です。大学という巨大な組織を動かすには、こうした「個を見る」ことが不可欠です。
インタビュアー: 職員に対しても、具体的な能力開発を行っていると伺いました。
佐藤: はい。全職員を対象とした半日単位のリーダーシップ研修を、3年サイクルで実施しています。そこで最も重視しているのが「自己理解」です。自分がどう組織に貢献できるか、自分らしいリーダーシップとは何か。職員が自らを理解していなければ、学生に「自分らしくあれ」と説くことはできません。
インタビュアー: 学生、教員、職員がそれぞれの「自分らしさ」を尊重し合う。その多様性こそが、不確実な時代における大学の強さになるのですね。
9. 不確実な時代を生き抜くための「読解力」と「学び」の姿勢
TOPインタビューのシリーズとしての締めくくりは本の紹介コーナー。佐藤学長は現代人のリテラシーというテーマを象徴する二人の書籍を挙げた。
インタビュアー: 最後に、学生もしくは教育関係者向けにお勧めしたい本の紹介をお願いしております。
佐藤: はい、現代の学生や教育関係者にぜひ手に取っていただきたい本があります。今井むつみさんの『学びとは何か』、同じく今井むつみ/秋田喜美共著『言語の本質』、そして新井紀子さんの『AI vs.教科書が読めない子どもたち』・『シン・読解力』です。スマートフォンやAIの普及により、文章を深く読み解く「読解力」の低下も問題は真剣に考慮する必要があります。その意味で、これらの書籍はとても示唆に富んでいます。
インタビュアー: 先ほど仰った「主体性」という言葉の解釈のズレも、まさに読解力の不足が招く問題ですね。
佐藤: その通りです。言葉の意味が変容する中で、コミュニケーションの土台が揺らいでいる。だからこそ、自分の「読む力」を過信せず、磨き続ける姿勢が重要です。本インタビューで語ってきた「リーダーシップ」も「国際化」も、すべてはその根底にある「言葉の力」に集約されます。学びの楽しさは、言葉を通じて世界と自分を再定義し続けることにあります。共立女子大学は、これからもそのための「確かな灯台」であり続けたいと思います。
インタビュアー: 日本語学という緻密な視点から、大学経営というダイナミックな領域まで、「言葉」という一本の軸が鮮やかに通ったお話でした。本日はありがとうございました。
(終わり)
共立女子大学・共立女子短期大学 学長 佐藤雄一氏 プロフィール
1965年福島県生まれ。千葉大学大学院文学研究科 修了後、1995年、共立女子大学 国際文化学部 専任講師に着任。2001年 国際文化学部 助教授、2009年国際学部 准教授、2012年 同 教授、2016年国際学部学部長に就任。共立女子大学・共立女子短期大学 図書館長、副学長、学長代行を経て、2025年1月に学長就任。専門分野は、日本語学、日本語教育。著書に、『文法の時間』(共著,至文堂)等がある。

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インタビュー 執筆・編集:原田広幸(KEI大学経営総研)


