
電気通信大学 田野 俊一学長インタビュー[前編]
■IRTによる入試の可能性と課題
――今回の情報入試にあたって、他教科と同じように弁別性のある問題ができるか、という議論をされてきたとのことですが、今回情報と数学でCBTを実施されてみて、何か違いは出たのでしょうか。
今回、数学が得意な人と情報が得意な人は違う、という傾向は出ましたね。
数学は、ごく少数の規則を駆使して解くことが得意でなければいけないですよね。一方、情報は問題の分析力がないといけないので、タイプが違います。学内でも、「情報は数学と一緒じゃないか」という話はあったのですが、やはりタイプは違っていました。
そういったことも、CBTを行ったことで明らかになりました。
――IRTは、カリキュラムや段階がある程度線形的に把握できるような伝統的な学問ではテストができる、ということがあると思いますが、他の教科や科目では難しいということはあるのでしょうか。
知識を細切れで問う部分はIRTに乗りやすいですが、大問形式の、積み上げ型で頭を使って解く問題は、データも多くないので難しいかなと思います。プログラミングでも、単純なプログラミングでは使えるけれど、複雑なプログラミングはなかなか難しいという可能性はありますね。
英語や化学、物理なども、知識がずいぶん必要なので、IRTはやれると思いますが、本当に頭が良いかどうかというのは、今の個別テストのような形式で測ることになるでしょう。
私は、CBTというのは、どれくらい習得したのかを測る基礎学力テストとはとても相性がよいと思います。ですから、全ての高校生が受験するテストをCBTで実施して、ある一定の学力があった人は大学を受験できる。そのときは個別試験で、筆記テストなり口頭試問なりで実施すべきだろうと思います。
日本は欧米と違って、そういった基礎学力テストをやっていないので、それは入れないといけないよ、とずいぶんお話ししているところです。
――IRTだと問題を公開できなくなりますよね。今の大学入試は、基本的に問題を公開していますから、この制度的なハードルをどのようにクリアしていくのでしょうか。
おっしゃる通り、CBTを受験する際には、問題を公開しませんというのを最初に誓約させるわけです。他の国も同様です。現在入試問題は公開が原則ですが、今後IRT入試のセンターを作って、その中の一部のグループの人たちが協定なりチームを作ってやっていくことになるのだろうと思います。