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東京女子大学 森本 あんり学長インタビュー[前編]

大学独自のベストカリキュラムで学生に最高の学びを

こんなことをお聞きになりたいかは分かりませんが、とにかく日本の大学は設置授業数がやたらに多い。たくさんアラカルトで示しておき、その中から学生個々の興味関心にあわせて好きに選択すればよいと考えているのかもしれませんが、私はそれは違うと思います。

学生が好きに授業を履修するのではなく、本当は、「私どもの大学は、このカリキュラムで、学生に最高の学びを提供できるんだ」と確信を持って言えるカリキュラムをつくるべきなのです。しかしながら、自大学のカリキュラムにそこまでの自信がないために、「いろいろ取れますよ」と言ってしまうのでしょうね。だから今でいうと、例えばデータサイエンス分野を設置するなどして、どの大学も似たり寄ったりになってしまっているのですよ。

品ぞろえが多いとお客さんが来ると思っているのでしょう。昔のデパートの発想です。けれども、こと大学のカリキュラムに関しては、その方法ではよくないと思います。

私はカリキュラム同様、卒業単位数も各大学で決めたらいいと思いますよ。しかしながら、日本の大学はどうしても文部科学省の通達や指導をとても大事にします。卒業単位数はもちろん、授業時間15週などもそうですね。文部科学省も「各大学の自主性を」と発信してはいますが、皆どうも横並びにしたがります。

これだけ受けねばならない授業があると、学生たちは課外の勉強時間をなかなか確保できません。各授業は1週間に1コマずつだと思いますが、学生の目線に立つと、仮に1週間あたり10コマ履修していた場合、その人の頭の中では10種類の授業内容が常に回っていることになります。それを完璧に処理しなさいなんて、なかなか無茶な話だと思いませんか?

例えば、私の前任校のICU(国際基督教大学)は3学期制で、各授業が週に3回あります。学生が履修している授業数は、1学期あたり4~5つです。したがって、彼らの頭の中を常に回っているのは、4~5種類分の内容ということになります。このほうが短いスパンでインプットとアウトプットを重ねられるため、集中的に勉強でき、私は良いと思うんです。他の大学も、「これが本学のベストだ」という教育方法を、自分たちで考えるような姿勢があって良いのではないでしょうか。


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