TOPインタビュー

国際紛争、大規模災害、少子高齢化など、厳しい状況の中で新しい道を拓くための人材育成・社会貢献に資する大学への期待は大きい。真摯に改革に取り組む大学トップの声を紹介する。

清泉女子大学 山本達也学長インタビュー

■ 「手段としての教育」という考え方

両学部とも、それぞれのカリキュラム体系を持っていますが、共通化する際、「汎用的能力の獲得」を強く意識しました。もちろん、専門知識や技能を身につける、という点はディプロマ・ポリシーで最重要視されるべきなのですが、残りの部分では汎用的能力の獲得を大切にしています。

また、1学部制から2学部制へと移行する際に、「基幹教育」という仕組みをつくりました。「基幹教育」で「学びの幹」を育てていき、その先に枝葉が伸び、「総合文化学部」と「地球市民学部」がある。根の部分は、両学部に共通していて、その中に「建学の精神」という養分が通っているというイメージですね。

山本:本学は聖心侍女修道会を設立母体としているとお話ししましたが、教育の実践において、大きく2つの目的が掲げられました。1つ目は、神は人間一人ひとりをかけがえのないものとして大切にし、愛している--このことを、広く伝えていくということ。2つ目は、社会を再生し、癒し、再建するということ。そしてこの点において、教育は「目的」ではなく、あくまでも「手段」だった。「どうしたら世の中を立て直すことができるのか」と考えたシスターたちは、自分たちが教え、そこで学びを得た人を輩出していくことが、もっとも効果的だと思い至ったのです。

シスターたちの「手段としての教育」という考え方をベースに、基幹教育や、カリキュラムの組み方などを検討してきました。基幹教育は、清泉女子大学としての共通言語を育む場所だと言えますね。

今の時代、単純に知識を習得していく能力に関していうと、どうしたってChatGPTをはじめとする生成AIに勝つことはできない。学生たちには、こうした知識を何に使うのか、どんな価値を手に、自分たちは社会に向き合っていくのか、ということを学んでもらいたいのです。建学の精神にもとづいた価値観や倫理観、道徳観を示し、それから人間のあるべき姿や他者の痛みを想像する力を育む。こうした包括的な教育は、私立大学だからこそできることです。

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