佐賀女子短期大学 今村正治学長[前編]
■日本初、総合大学の学長 国内外公募に挑戦する
今村学長:2回目のAPU、新学部構想とともに、強く記憶に残っているのは、新学長の選考です。それまでの初代・坂本和一、モンテ・カセム、是永駿、三人の学長の方々は、立命館総長(立命館大学学長兼ねる)の任命でした。総長が、APU担当の副総長を選び、その人がAPU学長も兼ねるという考え方でした。立命館の総長は、教職員、学生、高校生、卒業生、父母など全構成員の代表による投票で選ぶ制度で、立命館民主主義の根幹を成しています。だから、APUの構成員代表も投票して、民主的に選んだ総長なのだから、APUの学長を、総長が任命しても当然だと考えられていたのです。
しかし、APUは、グローバル大学としての地位も確立し、複数の国際認証も獲得し、卒業生も1万人を超えていました。もう一人前の大学として自立する時期となっていたんです。そこで、四代目の学長は、自前で選びたい、いや自前で選ぶべきだと行動を開始したわけです。
京都の本部で、とくに立命館大学の学部長の方々との協議は、かなりの難産でしたね。全学で民主的に選んだ総長をないがしろにする、つまり立命館民主主義を軽んじていると思われたのでしょうか。結局、協議はおよそ1年にも及び、ようやくAPU独自の学長選考が認められることになりました。
私は、学長選考委員会の委員長になりました。選考委員会は、APUらしく教職員と若い卒業生、もちろん多国籍、ジェンダーバランスにも配慮しました。さて、選び方はどうしよう?委員会でいろいろ話し合い、公募にすることにしました。グローバルな大学なので、国内・国外を問わず、推薦も立候補も可とする。推薦人については資格不問とし、学生からの推薦も可としました。別府温泉の番台のおばちゃんも推薦できる仕組みです。結果、104名もの候補者リストが出来ました。
意向確認などをして、最終的に5人が候補として残りました。そこに、出口治明さんの名前がありました。
どういう学長像がいいのか、みんなで、おおいに悩みました。結局、APUは「第二の開学」をめざすのだから、大きなチャレンジの経験があるイノベーターがいい。そう考えました。候補者のなかで、アカデミシャンでなかった人は、出口さん一人だけですが、候補者5名との面談、最終候補者2名との面談を終えると、自然に委員の中で、「出口治明さんを学長にしたい」という雰囲気が高まり、決まってしまった。総長、理事長も承認し、正式に出口治明さんに決まりました。2017年12月のことです。
APU学長としての出口さんの活躍は、私が述べるまでもありません。「第2の開学」のかじ取りを見事になさったと思います。
(後編へ続く)
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今村 正治(いまむら まさはる)
プロフィール
1958年、大阪府生まれ。1981年、立命館大学文学部史学科卒業と同時に、学校法人立命館に就職。財務部長、総務部長、総合企画部長を歴任、立命館アジア太平洋大学設立に携わり、2014年、APU副学長・立命館常務理事に就任。2019年、立命館定年退職後、学園経営コンサルタントとして今村食堂株式会社設立株式会社ほぼ日、札幌慈恵学園・札幌新陽高校などでアドバイザー活動。現在、学校法人旭学園理事、佐賀女子短期大学学長。
インタビュー:本山德保,原田広幸(KEIアドバンス コンサルタント)
構成・編集:原田広幸(KEIアドバンス コンサルタント)