佐賀大学 兒玉 浩明学長インタビュー[前編]
■両大学の強みを生かした高度な教員養成と、大学教員への刺激の提供――熊本大学との共同教員養成課程設置②
共同教員養成課程設置を決めたもう一つの理由は、佐賀大学と熊本大学の2大学の強みを活かしたより良いカリキュラムをつくり、高度な教員を養成するためです。
近年、学校現場の教員に求められる「先生としてのスキル」は、これまでにないほど多様化しています。そのため、大学での教員養成においても、従来のように必要最低限の授業と実習を履修し、卒業すればよい、ということでは不十分です。大学初年時から学校現場に接する機会をつくるなどして、地域の課題を理解し、即戦力として現場で活躍できる高度な教員を育成していく必要があります。
私が学長在任中だけを気にするのであれば、教員養成課程についてここまで心配をする必要はないでしょう。しかし、10年、20年と時が過ぎ、教員需要が減少したその時になってはじめて慌てたり、他の大学はすでに多様な連携をしていて、佐賀大学だけ取り残されていたりすると大変です。
他大学と連携し、リソースを共有することで、持続可能かつ高度な教員養成機能を確保したい。 こうしたことを考えていたときにお声掛けいただいたのが、熊本大学でした。しかし、熊本大学の教育学部の規模は本学の倍ほどもあったので、サイズ感的に共同するのはなかなか困難では…と懸念していたところ、熊本大学も組織の見直しをしており、教育学部が本学とほぼ同規模に変わる予定だとお聞きし、「それならば一緒にやりましょう!」と、連携に至った次第です。
--教育学部の「フルスペック機能」の維持と高度な教員の養成以外にも、今回の連携で期待していることはありますか。
共同教員養成課程の設置には、リソースの共有や教員の効率的配置が可能となるなどの大学経営上のメリットがあり、また学生たちにとっても、双方の大学の授業を履修することが可能となるため、学ぶメニューが豊かになるなどのメリットが当然あります。これらに加えて、個人的には、今回の連携が先生方の刺激につながることにも期待をしています。
他大学と連携をすると、教員間で切磋琢磨するような環境ができます。この共同教員養成課程の設置が両大学の先生方の刺激となり、特に若手の先生方のスキルがいっそう磨かれることで、より活躍の場が拡がっていく。そうした環境が醸成され得ることも、連携する大きなメリットの一つだと思っています。
--共同教員養成課程での連携が、両大学の先生方のファカルティ・ディベロップメント(Faculty Development:教員が授業内容・方法を改善し向上させるための組織的な取組み。以下、FD)にもつながるということですね。
素晴らしい方々が近くにいれば、「自分ももっと頑張ってみよう!」という気持ちになるものです。先生方にアクティブな環境を提供できればと思います。