沖縄大学 山代 寛学長インタビュー[後編]
■難しい本にチャレンジして面白さを見出す その経験は大学だからこそできること
--昨今の社会的風潮として、リベラルアーツ教育(教養教育)が軽視されているように感じます。AI技術の発展やデジタル化の進展が急速に進む世の中においては、むしろデータ化できない個別性の高い学問も重要だと思うのですが、この点について先生はどのようなご意見をお持ちでしょうか。
教養教育は重要だと思っています。
やや話がずれるかもしれませんが、今の大学生はなかなか本を読みません。そこで、「沖縄大学論」では、本学の図書館職員にも登壇してもらい、「図書館で本を読もう!」という内容で講義をご担当いただいています。
この回の課題は、「いずれかの本を読み、その本についてレポートしてください」というもので、学生たちは毎年なかなか苦労しています。しかし、「沖縄大学論」全15回の終了時に、「15回の講義の中で何が一番良かったか」を問うと、意外にも「『図書館で本を読もう』が良かった」という声がかなり上がります。錚々たる面々がオムニバス形式で講義をしてくれている中でも、結構上位に入ってくるのです。
私はこのことを、なんだか救いだと思うんですね。「今まで本なんて全然読んでいなかったけど、本ってやっぱり読まないと駄目なんだと思った。それに、実際に読んでみたら面白かった」というレポートも見られます。こうした意見に鑑みると、まず「本を読むことの面白さ」を諦めずに伝えていくことが大切なのかなと思いましたね。
--本は読んでなかったり、読めていなかったりするけれど、学生たちにも「読みたい」という気持ちは、やはりあるのでしょうね。
「読んだら面白い」というのもあるのでしょう。また、本学では図書館主催で「読書の集い」というものも実施しています。
--それは学生を対象としたものでしょうか。
学生と教職員が対象です。私も数回顔を出したことがあります。その時は哲学の先生が本を選んでくださったのですが、初回はなんと、ハイデガー(20世紀ドイツの哲学者)の本だったのです。「これは難しいな」と思いましたが、意外にも結構面白かったですし、学生もついてきていました。こうした難しい本にチャレンジして、そこに面白さを見出すという経験を学生のうちにしておくのは良いことだと思います。私としても、それまで哲学の本とか敬遠していましたので、非常に新鮮でした。
--「本を読みたい」という中に、「難解な本を読んでみたい」という意識もどこか含まれているような気がしますね。
「何が書いてあるかは分からないけど、なんだかすごいことが書いてありそうだ!それが分かるようになりたい!」とかですね。そうした気持ちはとても大事だと思いますし、そうした気持ちを持ってくれる学生がいることを、とても頼もしく思います。だからそういった意味で、リベラルアーツの火は未だ消えていませんし、大学だからこそ、それが学べるのだとも思うのです。