• TOPインタビュー
  • 国際紛争、大規模災害、少子高齢化など、厳しい状況の中で新しい道を拓くための人材育成・社会貢献に資する大学への期待は大きい。真摯に改革に取り組む大学トップの声を紹介する。
山代寛学長

沖縄大学 山代 寛学長インタビュー[後編]

難しい本にチャレンジして面白さを見出す その経験は大学だからこそできること

教養教育は重要だと思っています。

やや話がずれるかもしれませんが、今の大学生はなかなか本を読みません。そこで、「沖縄大学論」では、本学の図書館職員にも登壇してもらい、「図書館で本を読もう!」という内容で講義をご担当いただいています。

この回の課題は、「いずれかの本を読み、その本についてレポートしてください」というもので、学生たちは毎年なかなか苦労しています。しかし、「沖縄大学論」全15回の終了時に、「15回の講義の中で何が一番良かったか」を問うと、意外にも「『図書館で本を読もう』が良かった」という声がかなり上がります。錚々たる面々がオムニバス形式で講義をしてくれている中でも、結構上位に入ってくるのです。

私はこのことを、なんだか救いだと思うんですね。「今まで本なんて全然読んでいなかったけど、本ってやっぱり読まないと駄目なんだと思った。それに、実際に読んでみたら面白かった」というレポートも見られます。こうした意見に鑑みると、まず「本を読むことの面白さ」を諦めずに伝えていくことが大切なのかなと思いましたね。

「読んだら面白い」というのもあるのでしょう。また、本学では図書館主催で「読書の集い」というものも実施しています。

学生と教職員が対象です。私も数回顔を出したことがあります。その時は哲学の先生が本を選んでくださったのですが、初回はなんと、ハイデガー(20世紀ドイツの哲学者)の本だったのです。「これは難しいな」と思いましたが、意外にも結構面白かったですし、学生もついてきていました。こうした難しい本にチャレンジして、そこに面白さを見出すという経験を学生のうちにしておくのは良いことだと思います。私としても、それまで哲学の本とか敬遠していましたので、非常に新鮮でした。

「何が書いてあるかは分からないけど、なんだかすごいことが書いてありそうだ!それが分かるようになりたい!」とかですね。そうした気持ちはとても大事だと思いますし、そうした気持ちを持ってくれる学生がいることを、とても頼もしく思います。だからそういった意味で、リベラルアーツの火は未だ消えていませんし、大学だからこそ、それが学べるのだとも思うのです。


関連記事一覧