フェリス女学院大学 小檜山 ルイ学長インタビュー[後編]
女子大に「男子を入れる?」
--男性中心の視点を変える具体的な取り組みは、何かなされていますか?
小檜山:今までは、単位互換制度のある学校から男子学生がフェリスに来て学んでもらうということはやっていなかったのですが、2025年度の新しい学部のスタートと共に、他大学の男子学生もフェリスの単位を取りに来られるようにするという執行部の方針を決め、今、大学全体の説得にかかっています。開かれたフェリスというのが私のテーマなので、男子に単位を取りに来てほしいんです。
高大連携を高校の共学校と実施する時は、男子高校生が科目等履修生としてフェリスに来たいというのであれば、来てもいいよと言っています。もちろん、女子大は維持した上で男子学生を受け入れていくというのが大前提です。
現在の共学校は、全員が男子だった空間に女子を受け入れてきたという経緯があります。共学校は、そもそも学問体系が基本的に男性中心主義でできているのです。ある旧帝大の教育学部を例にみると、そこは女子が45%ぐらいいて、学内でも女子比率が高いのです。教員も40%ぐらいが女性です。ところが、学問研究の対象としてジェンダーというのが明確に出てくるものは少ないです。
つまり、40%いる先生方は男性が作った学問領域で成功体験を修めてきたから、それを繰り返してしまう傾向があると思います。若い学生の中には、ジェンダーの観点を取り入れる学生も当然いますが、女性の割合の高さに比して、ジェンダーの観点が弱いのが現状です。
だから、やはり女子大では、女性中心の学問体系というのを見せていきたいのです。ジェンダーの観点を取り入れた学問体系というのを中心にカリキュラムを組み立てていって、女性の経験や女性のものの見方というのを中心にした学問体系を作っていきたいわけです。そして、そこに男子が来てほしい。最初はお客さんでいいから来てもらいたい。単位互換で男子を受け入れることは、女子大学でかなり普通に行われています。私の前職、東京女子大ではずっと前から男子も受け入れています。もっとも、来る男子学生はあまり居ませんが。
--これは男性にとってはすごく学びがあると思うのですが、受け入れる側のフェリスにとってはどんな影響があるのでしょうか。どういう教育効果を期待されますか?
小檜山:男子学生が、女性中心のやり方や女性中心の学問を学べたらそれで良いと思っています。一方で、女子大の教職員の中には、男子が女子大の中に入ってくると、何か問題が起きるのではないかと懸念する人もいます。他の女子大学ですでに受け入れていて、問題が起こったことはないのですがね。そもそも、「女子学生を保護してあげる」という考え方自体が古いと思うのです。女性も今は外に出ていって、自立してやっていく時代ですから、自己防衛できる強さを養わなきゃいけない。そういう意味で、男子が来て女の園を荒らすのは、なんていう心配は全くしていないですね。むしろ、多様な人たちが学びにきて、そういう人たちがいるところでやっていけるような、「勇敢な女性」を育てたいと思っています。