
【1校】奈良女子大学 高田 将志学長インタビュー[前編]
■ 奈良国立大学機構
――貴学は2022年(令和4年)に奈良教育大学と法人格を統合し、「奈良国立大学機構」傘下の大学として新たな歩みを始めました。全国的に見ても、国立大学機構は数えるほどしかありません。法人統合によって実現可能となったことについて教えてください。
奈良国立大学機構の経営方針 | 国立大学法人 奈良国立大学機構
法人統合をした2022年度から「奈良カレッジズ学問祭」(以下「学問祭」)という講義イベントを、毎年8月下旬に1週間開催しています。本イベントは、法人下の2大学が中心となり、多様な分野の講義を、学問と大学の垣根を越えて展開するオムニバス形式の集中講義です。両大学のリソースを共有することで、従来以上に広く学問との出会いを創出できるようになりました。その中で、学生が自身の興味・関心を深め、今後探究したい分野を見つけたり、複数の分野を融合して学ぶ力が醸成されたりすることを目指しています。
受講形式は、参加者の都合に合わせて、対面受講かオンライン受講(同時配信)かを選択することができます。また、教養科目の単位としても認定されるものです。
2022~2024年までは、あくまでも本機構内でのイベントで、受講対象者も主として両大学の学部生でした。希望があれば大学院生や教員も聴講可能でしたが、基本的に本機構に属する大学の学生教職員のみが、その対象であったのです。
しかし、第4回となる2025年度は、奈良市の協力を得られたことで、参加校が奈良県下の大学、大学院大学および高等専門学校に拡がり、計10校が連携したイベントへと大きく成長しました。同時に、今年度から学生・教職員のほか、奈良市民の方々や近隣企業にお勤めの方のご参加も可能となり、地域の皆さまに先端的な研究に触れていただける機会を提供できるようにもなりました。このことをとても嬉しく思っています。
本イベントの拡大には、奈良市のほか、奈良商工会議所様のご協力も非常に大きかったです。2024年度まで、本イベントは本学と奈良教育大学のキャンパスの2会場にて実施していました。会場が会期途中で交代するため、参加者にも運営側にも、やや大変だった部分があったように思います。しかし、2025年度は、非常に利便性に優れた奈良商工会議所様の建物をイベント実施期間中ずっとお借りできたため、参加大学の増加にも堪えることができ、また、イベントのより広い開放も実現できました。
法人統合初年度から「学問祭」には力を入れて取り組んできましたが、当初はあくまでも法人下の大学間連携にとどまっていました。それが徐々に規模を拡大し、今日のような産官学が連携した大きなイベントへ発展したことは、とても誇らしく、喜ばしいことです。本イベントが学生の知的好奇心を刺激し、興味と知識の幅の拡大を促進してくれることはもちろん、法人下の両大学、県下の大学、ひいては「学生のまち・奈良」*のブランディングにもつながってくれることを期待しています。
*奈良市内には7大学が立地する
(画像出典:国立大学法人 奈良国立大学機構ホームページ)
――奈良国立大学機構としての取り組みが認められ、地域が一体となるようなイベントへと発展していったのですね。
昨今、大学の担う使命として「地域連携」が非常に重要な位置を占めるようになってきました。そうした中で、「学問祭」は地域の産・官・学をつなぐ、大きなきっかけになり得ると思っています。
連携の事例が一つできると、次の連携へのハードルがぐっと下がるのは想像に容易いでしょう。そして持続的な連携からは、既存の取り組みの拡大や、新規プロジェクトの創出が期待できます。今後本学がさらなる地域連携を図っていくうえでも、「学問祭」の拡大が持つ意味は大きなものであったと言えます。
――「学問祭」は2大学が一法人にまとまったことで実現が可能となった取り組みの一つかと存じます。そのほか、奈良国立大学機構として、今後の展開としてはどのような取り組みを検討なさっていますか。
将来的には、両大学間で教員養成に関わる科目の共通化を図っていきたいと考えています。本学にとり、奈良教育大学と連携できることの最大のメリットはここにあると言っても過言ではありません。
本学は奈良女子高等師範学校を前身に持つ大学ですから、当然、教員養成にも取り組んでいます。しかし、それに特化した大学ではありません。研究にも力点を置いて取り組んでいく必要があります。また現在、教員免許状の取得に必要な単位数は非常に多く、一つの大学だけで対応しきるのはなかなか大変です。
そうしたとき、2大学が連携し、授業運営の効率化を図ることができれば、双方の大学へプラスの効果が期待できるでしょう。とりわけ本学にとって、奈良教育大学の教員養成に係るリソースはたいへん貴重です。それを活用させていただけることは、本学の教育上、そして大学経営上も非常に大きなメリットを生みます。両大学の強みを活かした教員養成の共通課程を、相互にプラスの影響を与え合える形で構築していけるよう、調整が始まっています。
これら以外にも、一法人となったことで、事務組織の効率化も進みました。けれども、現状で「2大学1法人」のメリットをすべて享受できているとは決して言えません。まだまだ可能性は広がっています。その「可能性」を100%追求できるよう、今後もさまざまな連携に取り組み、一つずつ着実に成果を出していきたいです。


