大阪経済大学 山本学長

大阪経済大学 山本俊一郎学長 インタビュー「創発が日常になるキャンパス」

「創発が日常になるキャンパス」で、社会の核となる人材を育む —大阪経済大学の挑戦—

2032年に創立100周年を迎える大阪経済大学。その節目に向けて、「自由と融和」と「人間的実学」という創立の原点にある理念に立ちながらも、ミッション/ビジョンを現代語で再定義し、教育・研究・社会実践をつなぐ「場」を徹底的に設計している。タグラインは「生き続ける学びが創発する場」。この言葉に込められた想いは、単なるスローガンに留まらず、大学の物理的な空間デザインから教育プログラム、さらには育成する人材像に至るまで、あらゆる側面に浸透しているという。 創立の理念を現代的に再構築するプロセスから、社会が真に求める「フォロワーシップ」という新たな人材育成理念の発見、そして大学と社会が学び合う好循環の創出まで、大阪経済大学の挑戦の全貌を解き明かしていく。学長 山本俊一郎(やまもと しゅんいちろう)氏に、100周年に向けたロードマップを聞いた。


1.  100周年に向けた理念の再構築:「創発」という新たなミッションの誕生

どのような組織変革も、その根幹には明確な理念とミッションが存在する。大阪経済大学が100周年という節目を前に、まず着手したのは、自らの存在意義を現代の言葉で問い直すことだった。ここでは、創立以来の精神である「自由と融和」「人間的実学」という原点を見つめ直し、そこからいかにして「創発」という新たなミッションが、熱い議論の末に鍛え上げられたのか、その誕生の物語を紐解いていく。

山本俊一郎学長: はい。2017年から18年にかけて、当時の理事長・学長から、若手の教職員が「100周年に向けた大学の将来像を描いてほしい」と託されたのが始まりです。私(山本学長)が教員代表となり、職員からも職員代表を募り、教員6名、職員6名の計12名でチームを組みました。当初のお題は、中期計画の叩き台を作ることでしたが、私たちは、もっとラディカルに「ミッション」から考えるべきだと考えました。

学長: ええ。議論は白熱し、夜な夜な集まっては熱く語り合いました。まず立ち返ったのは、創立の理念である「自由と融和」と「人間的実学」です。とりわけ、「人間的実学」の「人間的」という部分には、単なるビジネススキルを教える専門学校ではなく、社会課題を解決するための「想い」や「人との関係性」も重視するという創設者*たちの強い意志が込められていることを再確認しました。 

*創設者の一人 黒正巌博士は、日本の社会経済史学樹立に貢献した経済学者で、大阪経済大学の初代学長に就任した。

学長: 現代社会は、多様な価値観がぶつかり合い、混ざり合う中で、新しい価値を生み出していくことが求められています。学生たちは、グループワークで議論を重ね、研究者は、学内にとどまらず学外からも集まってきて、知的な議論を交わす。こうした多様な要素の相互作用から、「予期しなかった何か」が生まれる機会を、大学が意図的に作るべきだと考えました。このコンセプトを表現する言葉を探していた時、ある教員が「創発(そうはつ)」という言葉を教えてくれたのです。

学長: まさにその通りで、会議でも「なんですか、その“創発”って」と戸惑いの声が上がるほどでした。ですが、私たちの目指す姿にはぴったりでした。この言葉をミッションに据えるにあたっては、「創発する場」なのか「創発できる場」なのか、はたして「創発する」という動詞は自動詞なのか他動詞なのか、などという文法的な議論まで巻き起こるほど、真剣に考え抜きました。

学長: はい。これを核に、私たちのミッションは、「生き続ける学びが創発する場となり、商都大阪から社会に貢献できる人財を輩出する」という一文に結晶化しました。このミッションを達成するための具体的な指針として、さらに「教育」「研究」「社会実践」「大学運営・組織」の4つのビジョンを策定し、5ヵ年の中期計画、さらには各部署の年度計画へと落とし込み、PDCAサイクルを回す仕組みをこの6年ほどで構築してきました。

(次ページへ続く)

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