大学入学者選抜の変更における2年前予告を考える(後編)

6 入試変更時は入学者選抜の中期的な展望に基づく検証を

入試変更の話題が学内で持ち上がる場合,志願者数が思うように集まらないなど,学部所属の入学試験担当委員からの提起が多いものと推察する。各学部の入学試験担当委員は数年間の任期制の場合が主流であり,たまたま任期時に志願状況が芳しくない結果となってしまい,すぐにでも入試を変えたいなどの要望が出ることは大学にいればよくある話だろう。

しかし,大学志願者数は生き物のようなもので,市場の変化や偏差値,隔年現象,そして競合大学の動きにより変動する。大切なことは,1回の入試データだけで評価しない,ということである。将来の見通しが厳しい状況が明らかな場合を除いて,中期的な展望に基づいた適切な判断を下すことが必要となる。

ここで,私の勤務校の実践例を紹介しておきたい(この事例は私の勤務校のみならず一部の国立大学でも同じ実践例がみられるため,独自の取り組みではない)。私の勤務校では昭和49年(1974年)から入学者選抜方法研究委員会を設置し,現在に至るまで入試分析はもとより入学者の追跡調査を毎年にわたって実施している。当委員会の設置は昭和40年代前半,国立大学において入学者選抜方法に関する研究委員会の設置が当時の文部省主導で行われたことが背景にある。

勤務校の当該委員会(現在ではアドミッション部門が当事業を担当)では,毎年にわたり報告書(非公開)を作成し,入学者選抜の改善に寄与するエビデンスに繋げている。この報告書の各種データを参考にすれば,中期あるいは長期的な展望に基づいた検証へと繋げることが可能となる。ただし,これらを毎年にわたって作成することは相当な労力がかかるため,それを担う入試関係部局あるいはアドミッション組織の機能強化が前提にあることを申し添えておきたい。

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