
東洋大学 入試部長・加藤建二氏 講演
■2026年度以降の入学者選抜の基本方針
基礎学力テスト型の入試を総合型選抜に変更 指定校推薦は減らす方向
ここからは、2026年度以降の入試の基本方針についてお話しします。
一般選抜では、先にお話しした「多科目」「英語外部試験利用」そして「文系の数学必須」の3つが大きな柱になります。いわゆる知識・技能の学力を重視した試験に一番力を入れていきます。
年内入試に関しては、基礎学力テスト型の入試を2026年度から総合型選抜に変更します。2025年度は学校推薦型で実施しましたが、高校に聞いてみると、学校推薦というのはあくまで1校のみであるべき、というお考えのところが多くて、推薦書を出してもらえなかった人がかなりいた、ということがあったからです。
また、この基礎学力テスト型での入学者数を踏まえ、今後指定校推薦は大幅に減らしていくことになります。指定校推薦は高校によって使われ方にかなり差があるので、今後丁寧に見直しをしていく、ということを高校にもお伝えしています。要は、一般選抜による入学者の人数は変えずに、年内入試の中でバランスを変えていく、とご理解をいただければと思います。
もう一つは、入学者に占める第一志望者の割合を拡大していきたいと考えています。一般選抜でレベルの高い学生をたくさん取ろうとすると、おそらく歩留まりが低くなるので、第一志望者の割合も低くなります。その点は相反するのですが、「本当に入学したい」という学生の割合を上げていきたいと考えています。

2026年度の入学者の割合は、このように考えています。
全体の募集人数は2部も含めて7,375名。このうち7割は一般選抜です。
基礎学力テスト型は、今年より少し増やして8.7%。いわゆる専願型の総合型選抜・学校推薦型選抜は合わせて16%。留学生が5%程度という予定です。

一般選抜は多科目判定型入試へ
一般選抜では科目数を増やしています。以前は2教科・2科目型もありましたが、現在は全て3教科・3科目以上です。4教科・4科目型の募集定員をさらに拡大し、共通テスト利用入試では、5科目判定も行います。
ただ、基礎学力テスト型は、実施時期が11月か12月になるので、特に公立高校では地歴・公民や理科の範囲が全部終わっていない可能性に配慮して、必履修科目である英語、数学、国語の3教科から2科目で試験を行う、という形になります。
学力試験を課す入試の募集人員は全部で5,811名、全体の約8割で、これが今の東洋大学のベストの形ではないかと思っています。

先ほど、英語外部試験利用入試がやや頭打ちという話をしました。これまでは英検が主でしたが、2026年度入試からはGTECの検定版Advancedタイプを追加することにしました。これによって、利用の割合を伸ばしていけたらと考えています。

文系学部における数学必須入試も、募集人員が1,000名を超えてきています。これも徐々に拡大していくことになると思います。

基礎学力テスト型は総合型選抜で実施
そして、基礎学力テスト型は併願可能な総合型選抜に変更します。試験科目と配点は、基礎学力テスト[国語または数学(100点)+英語(100点)]+書類審査[調査書など(10点)]+事前課題の小論文(10点)の220点満点という組み合わせです。
「本当に小論文をきちんと見るのか」とよく聞かれますが、これは学内で体制を組んで 人数は未定ですが、各学部の相当数の教員できちんと見る、ということで了解を得ています。
大きく変わるのが試験会場です。全国からのニーズが相当あったので、2026年度は、入学試験会場を全国に設けることにしています。
※2026年度入学試験要項

その他、高大接続を進めることで、アドミッションポリシーに合った入学者を確保することを目指しています。また、先ほどお話ししたように、指定校推薦は大幅に見直しをすることになります。

第一志望者の割合の拡大については、全ての入学試験の方式で第一志望者の割合を出しています。2014年から2018年は約40%、その次の5年が47.4%、そしてここ2年は52.3%まで上がっています。この50%という割合はぜひキープしたいと思っていますので、ここを踏まえながら、いろいろな戦略を進めていきたいと思います。

大学入試の真の目的とは
大学入試は、各大学が目指す教育を実現するために行うものである、と考えます。もちろん、入学者を数的に確保するということも大事ではありますが、学生を教える教員も含めて、大学はどのような教育をしようとしているのか、というところから振り返って、実際にどのような学生が欲しいのか、そのためにどういった試験をしたらよいのか、ということを考えるべきであると思います。それをきちんと発信することが、大学としての受験生への最大のメッセージとなると考えています。
今回は、東洋大学はこのような考えで進めている、ということをお話ししました。皆様のご参考になれば幸いです。

東洋大学 入試部長 加藤建二氏
プロフィール:
2013年4月から現職。職員生活38年中25年が入試部勤務。
2014年から10年間、学校法人の理事も務める(2024年12月退任)。
他大学に先駆け、紙の大学案内の廃止や一般選抜での英語民間試験利用等を主導し、入試改革のフロントランナーと呼ばれる。東洋大学OB。講演、執筆多数。
Author:小松原 潤子(KEIHER Online 編集委員)
編集:阿部 千尋(KEI大学経営総研 研究員)


