
豊島岡女子学園 中学校・高等学校 インタビュー[後編]
■大学選びへの影響――生徒たちの興味が探究活動によって明確化
--続けてお伺いしたいのが、豊島岡女子学園はもともと理系の生徒が多いと思いますが、進路選択や、理系のどのような分野を学びたいかという動向は、探究活動等を通じて変化がありましたか?
十九浦:探究活動とのつながりは明確には分かりませんが、工学系の志望者が増えています。本校は医療系、医学部の志望者が昔から多くいますが、いわゆる理工系で言うと工学部が多いです。ただ、それが『T-STEAM』をやったから、課題探究をやったから、というふうに言い切ることはできません。安易な決め方はせず、生徒たちの中でいろいろなことが嚙み合って、自分の進路を決めていますから。
--直接の進路選択というところまで行かずとも、探究活動を通して、関心のある分野を見つけるということはあるのでしょうか。
十九浦:あります。理系に限らず、ここ6~7年ぐらいの傾向として、文系の生徒も、「自分がやりたいこと」で文系を選んでいます。2022年度から実質全員高3まで数学をやるカリキュラムになったこともあり、例えば「数学ができないので文系に行きます」というような逃げの選択をするのではなくて、「こういうことをしたいから文系です」としっかりと言える生徒たちが今は多いです。
増田:自分にとって何が面白いのかとか、どういうことに興味があるのかとか、どんなことをやりたいのかというのを、6年かけて、いろいろな発表をしながら考えてきているので、自分の興味に対する解像度が高くなってきているのではないかと思います。
--進路指導ではどのようなことをされていますか?
十九浦:進路指導というよりかは、中学の時から、6年間をかけて段階的に意識させています。低学年に今意識させているのは「実装」です。自分の意見やアイディアを出すだけで終わってしまう生徒は創りたくなくて、実際にものを作ったり、アイディアを形にしていったり、という「実装」のところを意識させています。
--この数年間で大きな出来事としてコロナ禍がありましたが、コロナ禍を経て学生さんたちに変化はありましたか?
十九浦:探究活動で言うと、コロナ禍では学外から人を呼べなかったわけです。『AcademicDay』で外部の方に来ていただくこともできなかったし、それこそ保護者の方ですら校内に入れられませんということで、オンラインでいろいろな取り組みをしたこともありました。逆にその時に、では校内全員でいろいろなものを見よう、という流れができて、全教員が全生徒の発表を見て評価するということをやったことで、課題探究により加速がつきました。そういう意味では、コロナ禍での校内の取り組みによって、課題探究のやり方が明確になりはじめたというか、動きやすくなったところは大きいです。
増田:インドとの交流をはじめとして、Zoomでつなげばいろいろなことができる、いろいろな方法があるということに気づくことができました。オンラインを上手に探究活動に取り入れられると、活動の幅が広がるのが見えてきたというのがあると思います。
十九浦:とにかく、オンラインの活用が一気に広がりましたよね。
--コロナ禍で探究活動の地盤ができた上で、今いろいろなところと交流ができはじめて、より発展していっているというフェーズですね。
十九浦:現在では、オンラインと対面はしっかりと使い分けていますね。全部がオンラインでいいとは思っていないですし、現地に行くことの重要性も感じているからこそ、探究型宿泊研修等が成立しています。校内でも、原則生徒同士や教員と生徒の間は全部対面で実施したいと思っています。
増田: 生徒たちにも、「Zoomで聞けることはZOOMで聞けばよいのだから、現地に行かなければできないことでないと、やる意味がない。では、現地に行かないとできないこととはなんだろう?」というように考えさせたりしています。