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立命館大学デザイン・アート学部/デザイン・アート学研究科(仮称)インタビュー[前編]

修士課程の履修制度、修了認定について

八重樫:多忙な方でも短期間で学位を取得できるよう、修士課程では、社会人を対象とした1年制のカリキュラムを考えています。本来2年間で修めるカリキュラム(修了単位数:30単位)を、1年間で修め切ることができるように、現在検討中です。

八重樫:まず、1年制カリキュラムで履修する社会人に対しては、できるだけオンライン授業を活用したいと考えています。従来の通学型の場合、社会人への対応として、夜間や土日にも開講する必要がありました。しかし、オンデマンドやオンラインコミュニケーションを整備すれば、平日でもかなり自由度が高い時間の使い方が可能となり、学生も我々教職員も、ワークライフバランスを保ちながら貴重な時間を有効に使うことができます。

ただ、ご指摘の通り、じっくり学べる環境も重要ですので、修士課程については、主として社会人を対象とした1年制と、従来の2年制の、二つの課程を設置する予定です。2年制は社会人に特化しないというだけですので、社会人が2年制課程を選択してもらうことに全く問題はありません。

八重樫:社会人の1年制課程では、自身の研究テーマやプロジェクトを持った上で入学してくる形を取りたいと考えています。そのため、修了要件については「課題研究」という枠とする予定です。しかし、単に何かをつくる、実践を報告する、ということだけでは認定せず、修了にあたっては、その方法・プロセスや成果の学術的・社会的意義を検討した論文を一緒に提出していただくことを考えています。

ただし、一概に論文とは言っても、いわゆる学術論文形式の場合もあれば、制作プロセスを解説するような論文の場合も考えられます。あるいは、とある課題に対するソリューションを提示するような論文でも結構です。必ず全員に論文を執筆していただきますが、そのボリュームやバランスは、各人の研究テーマや研究方法によって変わってくるようなイメージをしています。

八重樫:確かに、片仮名で「デザイン・アート(学部)/デザイン・アート学(大学院)」という学位名称は、日本でもほぼ見られないと思います。しかし、我々が独自にこの学位を考えたというよりは、世界の共通語として確立されている、英語の“Arts and Design”を日本語でどう表わすかということだけの問題で、広くアートとデザインを学んだことを認める学位である点において、大きな違いはありません。

しかしながら、デザイン・アート学部/デザイン・アート学研究科の中心的なコンセプトが、「アートの感性を基盤としたデザイン学」を学びのコアに置くことであることに鑑みると、「デザイン・アート/デザイン・アート学」という学位名称であるほうが、新学部/研究科のコンセプトには合致しているように、私は思います。

[後編]につづく


立命館大学 八重樫 文(やえがし かざる)教授

プロフィール
学校法人立命館 総合企画室 室長/立命館大学 デザイン・アート学部 デザイン・アート学研究科(仮称)設置委員会 副委員長/立命館大学 経営学部 教授/立命館大学DML(Design Management Lab)チーフ・プロデューサー。
1973年北海道江別市生まれ。武蔵野美術大学造形学部基礎デザイン学科卒業、東京大学大学院学際情報学府修士課程修了。
デザイン事務所勤務、武蔵野美術大学造形学部デザイン情報学科助手、福山大学人間文化学部人間文化学科メディアコミュニケーションコース専任講師、立命館大学文理総合環境・デザイン・インスティテュート准教授、同経営学部准教授を経て、2014年より同教授。2015、2019年度ミラノ工科大学訪問研究員。
専門はデザイン学、デザインマネジメント論。

 主な著作
『新しいリーダーシップをデザインする』『デザインマネジメント論のビジョン』『デザインマネジメント論(ワードマップ)』(新曜社)、『デザインの次に来るもの』(クロスメディア・パブリッシング)、訳書に『突破するデザイン』(日経BP社)『デザイン・ドリブン・イノベーション』(クロスメディア・パブリッシング)『日々の政治』(BNN)など。


インタビュー:満渕匡彦・原田広幸(KEIアドバンス コンサルタント)
構成・編集 :山口夏奈(KEIアドバンス コンサルタント)

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