東京出身者が有利な東大入試 教育格差もコロナものり越え「地方高校生に、追い風を」おこせ  [インタビュー] 【独自記事】

牛丸:去年の秋、鹿児島県奄美諸島の「沖永良部島(おきのえらぶじま)」の高校から依頼があり、出張イベントを行ないました。たまたま、鹿児島県の公立高校の先生が離島に赴任されて、私たちを呼んでくださった。沖永良部島は、和泊町と知名町の2町で構成される小さな島ですが、ここでの体験は衝撃的というか、あまりに印象的でした。人口1万人ほどで、コンビニやチェーンの店、大手塾などはない。専門学校も大学も、島の外に出るしかありません。

牛丸:私たちの話すこと一語一語を、ものすごく吸収しようとしているのが伝わってきました。まさに、情報に飢えているという印象。大学生が一人も島中にいないわけですから。珍しい人が来た、みたいになりました。沖永良部島では、大学に進学することは生徒にとっても、学校にとっても、一般的な進路と思われているわけではないので、直接得られる情報が限られているのです。

牛丸:大学にどうやって行けばよいのか、大学に行くとどういう良いことがあるのか、こういう生の情報は、私たちが行って初めて聞く、というような状況だったと思います。そもそも、主催の先生は、島民の生徒を東大に行かせるためではなく、大学に行くということの意味、大学という選択肢を見せる、という趣旨で私たちを呼んでくれたようです。私たちが行くことで、刺激になればよいと。結果、皆さん、とても真剣に聞いてくれてよかったと思います。

牛丸:まず、8月上旬に企画がいくつかあるので、それに向けて準備を進めています。また、夏休みには、東大のオープンキャンパスに参加しますので、それに向けた準備も始めています。中長期では、新規の参加校を増やしていきたいと考えています。私たちは13年も活動をしているので、毎年のように企画・参加する「お得意様」の学校もありますが、一方で、少しずつ新規の問い合わせもあります。新規の学校にもきちんと対応し、数ももっと増やしていきたいと考えています。

牛丸:沖永良部高校に行って思ったことがあります。高校の先生や保護者の意識も、高校生が進学するときの壁になるということです。私たちの団体に声をかけてくれるような先生がいればいいのですが、そもそも大学進学に興味のない先生や親がいる学校では、生徒の将来の選択肢が限定されてしまいます。つまり、私たちを「まだ知らない高校」の意識を変えないといけない。そういう高校や親たちへのアプローチも、今後はしていかなければならないと考えています。


FairWind牛丸代表は、さらなる仲間募集のため、ホームページで地方出身の東大生に呼び掛けている。

「…皆さんがここに来るまでには、いいことも大変なことも、たくさんあったと思います。そしてその経験は、あなたにしか話せません。皆さんとの出会いで、進路、大学選び、もっというと人生が変わる高校生がいるかもしれません。この団体での活動を通して、あなただからこそ伝えられる経験や思いを、仲間と一緒に形にし、全国の高校生に届けませんか?」

もちろん、東大がすべてではない。しかし、進学意欲のある若者が、「教育格差」の犠牲にならない社会を作るためには、社会のリーダーになりうる前途有為のエリートが「頑張れば東大に入れる」環境は必要だ。


インタビュー・記事:原田広幸(KEIアドバンス コンサルタント)

関連記事一覧