大阪工業大学ロボティクス&デザイン工学部 インタビュー[後編]
■中高大連携教育に関する取り組み
Q:デザイン思考は幼いときから取り組む方が良いとおっしゃっていたことに関連して、貴学では常翔啓光学園中学校との連携教育で、「デザイン思考講座」を実施しているとうかがいました。こちらについて、詳しくお話をお聞きしたいです。
井上:常翔啓光学園中学校に、「K1クエスト」という大学連携プログラムがあります。ロボティクス&デザイン工学部では、毎年1年生を対象に、「未来の学校や未来の教室をデザインする」というテーマで、簡単なデザイン思考を体験してもらうワークショップを実施しています。テーマに沿って、デザイン思考のプロセスでアイデアを考えてもらい、最後に、粘土やレゴ、ダンボールを用いて簡単なプロトタイプを作って発表してもらう、3時間ほどのプログラムです。
「アイデアは夢物語で構わないよ」と伝えているので、彼らからは「校舎が移動する」であったり、「休み時間になったら廊下が自動的に出てくる校舎」といったユニークなアイデアが飛び出してきます。そして面白いのが、そのアイデアを通して、「彼らが学校生活の何に重きを置いているのか」、また「彼らは今、何に困っているのか」といった、彼らの問題意識が図らずも浮き彫りになることです。例えば上記のアイデアに鑑みると、教室間の移動が大変なのだろうことが推察されますよね。
■デザイン思考を活用した人材育成への取り組み
大阪工業大学と株式会社富士通総研は共同研究を行い、「ReBaLe(レバレ)」という、デザイン思考を用いた新たな人材育成手法を開発し、第11回情報システム教育コンテスト(ISECON2018)で最優秀賞を受賞している。インタビューの最後に、「ReBaLe」で育まんとする人材、そして、井上先生の今後の展望について話を聞いた。
井上:「ReBaLe」は「学ぶ」と「創る」が循環する新たなアクティブ・ラーニングの手法で、時代を牽引していく「チェンジメーカー」を育成することを目的としています。
「ReBaLe」による学びのプロセスを簡単に説明すると、まず、身の回りにある既存の社会システム・製品・サービスなどからターゲットを選び、それがどういう「モノ」や「コト」の要素から成り立っているのかを「ばらし」てみます。「ばらす」ことでターゲットの仕組みや機能が「わかり」、「わかる」ことで次の「まねぶ(真似て学ぶことを表す造語)」に進むことができます。ここまでがいわゆる既存の知識・技術を習得する段階です。
そして、「まねぶ」ことで得た知識や技術を応用して、社会の課題を解決する新しいアイデアや仕組みを「つくる」。この「ばらす」「わかる」「まねぶ」「つくる」のプロセスを通じて、「チェンジメーカー」を育成していきます。
今後、「ReBaLe」を授業に体系的に導入することで、「チェンジメーカー」たる学生をよりいっそう育てていきたいと考えております。また、「ReBaLe」を通して、デザイン思考の学びをより多くの方々に提供していきたいです。
Society5.0を牽引するチェンジメーカー育成手法「ReBaLe」が「情報システム教育コンテスト2018」で最優秀賞を受賞 : 富士通総研 (fujitsu.com)
一般社団法人ReBaLe推進協議会 – 学びのレバレッジ(てこ)で、小さな学びを大きな成果に