
電気通信大学 田野 俊一学長インタビュー[前編]
■ 学生の多様性を拡げる高大接続の取り組み
――貴学は、『UECスクール』や『匠ガールプロジェクト』など、様々な高大接続の取り組みをされていますが、このようなアイディアがどのように出てきて、どのように実現されているのでしょうか。

資料提供 電気通信大学
『UECスクール(電気通信大学 UECスクール)』は高校生を対象に、実験や演習を通して、情報・理工学を学んでもらうもの、『匠ガールプロジェクト(匠ガール公式 tumblr)』は女子中高生が、女性研究者と一緒に実験を体験するものですが、これらの目的は、電気通信大学を目指してくれる高校生の多様性を拡げたい、ということです。そのためには、様々なアクセスが必要ですから、その環境を整えようとしているわけです。
教員自身が多様な学生が必要であることを感じているので、自分から出張授業を買って出たり、講座のプログラムを作ったり、といったマインドが備わっています。ですから、特別なプロジェクトを仕立てただけではなく、教員の中から「こんなことをやってみよう」という意見が出てきたのが『UECスクール』でした。
『UECスクール』の講座はサイエンス系が多いですが、それぞれの研究分野の特性を活かした提案がボトムアップ的に出てきています。院生や学生も、そういったイベントに参加して、高校生の指導にあたっています。
高校生からすると、知らない大人から言われるよりも、自分に近い先輩から話を聞くのがいちばん響きますよね。ですから、若手の先生や女性の先生、参加する学校のOB、OGを配置するようにしています。そのほうが、彼らも一生懸命取り組みますから。
おかげさまで、多様な高校からの志願者は確実に増えています。
イベントの希望者は非常に多くて、すぐ満員になる状態です。あまり規模を大きくすると教員の負担が大きくなってしまうので、ある程度の定員で締め切っています。

UECスクール「高大連携基礎プログラミング」
――『匠ガールプロジェクト』は女子学生向けの講座ですが、女子学生の増加にはつながっていますか。
学部では、まだ期待したほどは増えていません。学部と修士で、女子学生は12~13%、博士が15%くらいです。ただ、本学で面白いのは、学部も修士も女子の比率が同じで、女子学生も修士に進学するのです。
他の大学では、学部で女子が入学しても、修士になると激減してしまうのですが、それがない。むしろドクターになると女性の比率が上がります。研究環境がよいのか、研究者に向いているマインドの学生が多いのかは不明ですが。
大学全体として、女子を増やすというよりもダイバーシティを拡げる、という努力をしています。本学には、情報系、通信系、機械系、サイエンスの4分野があって、サイエンスには女性研究者が2割くらいいます。ただ、まだ女性の教員がゼロの分野もあり、そうなると女子学生もなかなか行きにくくなるので、ここは何とかしなければいけないですね。
女性研究者を増やすと言っても、いきなり1人だけ入れても広がらないので、リーダーとなるような人を入れて、その下に若い人を入れて育てていく、という戦略を持っていく必要があります。サイエンス系ではそれがうまくいったので、他分野にも広げていきたいと思っています。