• TOPインタビュー
  • 国際紛争、大規模災害、少子高齢化など、厳しい状況の中で新しい道を拓くための人材育成・社会貢献に資する大学への期待は大きい。真摯に改革に取り組む大学トップの声を紹介する。

東洋大学 矢口悦子学長インタビュー[前編]

矢口:先ほどは、基盤教育の中心に哲学を置いているということをお伝えしましたが、2025年度からはそれを取り囲むようにして『総合知教育』を全学的に実践します。教員は自分の専門に依拠した科目を他のキャンパス、他の学部にも提供し、所属する学部学科を問うことなく、学生に自由に履修してもらうという仕組みです。この仕組みによって得られる知識・教養のことを、私たちの持っている専門知を総合したという意味で『総合知』と呼んでいます。似た言葉で「文理融合」があります。これは受験業界の文系・理系の融合というニュアンスで受け止められがちですが、もともと大学とは、融合的・総合的な場なのです。

 本学は、人文、社会科学、理工系に情報系と、計14学部も持っている大学で、科目数は12,000にものぼります。

 たとえば、文学を学んでいる学生が3年生になって、生命科学に興味を持ちもっと学びたいと思った時、自分の学びのペースに合わせて授業を履修できるような仕組みを目指しています。3万人の学生がいれば3万通りの学びが生まれます。それを本学では『3万人のLearning Journey』と呼んでいます。複数キャンパスを有するこのような大規模大学では無謀だとも言われるのですが、せっかく多くの学部を持つ東洋大学に入学したのだから、学部が違っても興味のあることを学べる方がよい。コロナ禍での経験を通して身に付けた各教員のオンライン・オンデマンド授業のスキルを活かし、この実現を目指しています。現在は、プログラム開発のできる職員の力を合わせて、学生がどのような方向で学びたいかによって、独自の時間割を組めるよう、AIを活用し履修のサポートをするプログラムを作り始めているところです。

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