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東洋大学 矢口悦子学長インタビュー[前編]

■ 哲学、そして総合知の教育

 矢口:世の中、絶対的なものや、唯一の解というものが見つかるなどということは本当に稀で、何もわからないという状況がほとんどです。そういったものを一つひとつ解明していきながらも、「今は正しいように思えるが、本当は誤りかもしれない」、と常に自己認識を問う謙虚さを持ち続けることが、最終的には、個人の強靭な思考力を作るのではないかと思っています。

 非常に単純化された考えや、絶対的なもの、「これしかない」と思われるような考え方は、案外弱いものです。「もしかしたら違うかもしれない」「よりよい解があるかもしれない」と、常に自らを問う向き合い方をしていたら、仮に異なる考え方や価値観が現れて、強い逆風が来たとしても、ときに踏みとどまったり、柔軟に受け止めたりすることもできる。大学で何を学ぶか、どういう学び方をすべきか、という問いの答えはここにあるように思います。14学部のどの学部でも共通に、哲学的なものの見方が大事だと自信を持って伝えることが出来ているのは、そのためです。


矢口:全学的に展開しているものは、「哲学」という科目そのものと、それから「自校教育(自学教育)」です。「哲学」と「創立者井上円了」と「本学の歴史」を学ぶ自校教育は、基盤教育の中でもさらに基盤として、全学カリキュラムの中心に位置付けています。現在、ほとんどの学部、学科でこれらの科目を単位化していますが、それが2025年度のカリキュラムからは全学部で必修となる予定です。哲学と自校教育という科目が必修なのは、本学ならではですね。

 本学には哲学科がありますので、哲学を専門とする教員が多数おりますし、井上円了の哲学を長く研究している教員も複数の学部におりますので、より専門的に学ぶことができますが、その一方で、全学基盤の「哲学」という科目では、哲学という学問を専門的に講じるだけではなく、「哲学する」マインド、哲学的思考法を学べるのが特徴です。また、各学部の専門科目においても、哲学的な思考を取り入れることに多くの教員が努力をしています。大学の認証評価を受審した際には、委員の方にも驚かれましたが、本学では、全教職員が建学の精神を理解し、それを自分の専門性や業務に重ねて、自分の授業や学生指導を通じて語ることができるのです。

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