
上智大学 杉村 美紀学長インタビュー[前編]
真の国際化を目指す上智大学の取り組みとは―――杉村新学長の目指す「世界をつなぐ」国際教育【独自記事】
2025年4月、上智大学初の女性学長が就任しました。総合人間科学部教育学科の杉村美紀教授です。もともと国際色豊かなイメージが強かった上智大学ですが、国際教育学を専門とする杉村新学長は、どのような大学を目指しているのでしょうか。ユーモアのたえない対話のなかに見え隠れする、杉村新学長の真剣な思いとは何か。前編・後編のロングインタビューをお楽しみください。

■ 国際教育学への道
--杉村先生は、アジア諸国の国際化や、グローバル化による人の移動と教育をテーマに、留学生、移民や難民、外国人労働者など、本人やその子どもたちの教育と、それをめぐる支援や政策について調査・研究をされていらっしゃいます。先生が国際教育学の道に進んだきっかけは何だったのでしょうか。
杉村:私の学生時代には、今のように交換留学のような制度もそこまで整っておらず、留学する友達も周りにいなければ、自分にもそのような機会はありませんでした。しかしながら、将来は、違った文化の人たちが交流したり協力することで人と人を繋ぐ国際交流に関係する仕事に携わることができればと思っていました。
そのきっかけとなったのは、学部1年生の時に受講した「国際関係論」の講義です。講義のなかで、「教育や文化交流を通じて平和をつくる」ということを聴いたことが大変印象深く、それがきっかけとなり、国際的な教育分野に心惹かれるようになったのです。
もうひとつのきっかけは、所属していた教育学科の授業です。その中で、多言語、多文化、多宗教を抱える社会では、社会と文化が人々の生活にどのような影響をおよぼしているかを考える機会があり、多文化社会では教育を通じてどのように国づくりが行われているか、そこでの多文化共生という課題に興味をもつようになりました。
私は、博士学位取得後は、家人に同行して海外に駐在していたこともあるのですが、その後、ご縁があって上智大学で奉職させていただくことになりました。国際教育、比較教育の分野で教鞭をとることになったのですが、大学から「あなたが好きなように教えたり研究したりしてください」と言ってもらったことは、今から思うと、とても有難いことであったと思っております。
--求められてそういう仕事をするようになったという面もあるような気がしますね。
杉村:まさにご縁だったと思います。上智大学に来てからは、私が教えるというよりも、むしろ学生から教えられながら、皆で「国際教育学」という学問分野をつくってきたことの方が多かったように思います。国際教育には国際理解教育、国際教育協力、文化交流、留学生交流などいろいろな領域がありますが、それらに対して、学生が国際理解教育の面白い教材を見つけたからと言って授業で紹介してくれたり、私とは違った視点から意見を出してくれる中で、そのことが私自身にとっても新たな学問的視点につながりました。
現在は、国境を越えた高等教育の連携プログラムが次々と登場しており、国際教育の新たな動きとして調査研究を行っています。上智大学には既存のプログラムのなかにそうした先進的な取り組みがあり、そのプログラムを使ってどのように教育に生かしたら良いのかと考えることができるのも、研究にとって良い刺激となっています。