TOPインタビュー

国際紛争、大規模災害、少子高齢化など、厳しい状況の中で新しい道を拓くための人材育成・社会貢献に資する大学への期待は大きい。真摯に改革に取り組む大学トップの声を紹介する。

清泉女子大学 山本達也学長インタビュー

山本:そうですね。2025年度からスタートした地球市民学部のソーシャルデザイン領域では、AIやメディアの専門家を採用し、いわゆるスキル系の授業やデザイン演習を担当してもらっています。アプリを開発するためのプログラミングの授業も取り入れました。手段として習得してもらいたいですね。

学生には、やはり在学中に、いろいろな課題を抱えている人がいること、それは他人事ではないということを実感してもらいたいです。

企画の案出しを行う学生たち

山本:はい。地球市民学部の学生は、「卒論だけ」では卒業できないんです。もちろん、卒論は書いてもらうのですが、学生の卒論を読んでいると、結論で大体「こうすべき」という、学生なりの「べき論」が広げられ、そこで終わってしまっている。

大学としては、「こうあるべき」が実際にはうまくいかない難しさも理解した上で、社会へ羽ばたいてほしいと思っています。解決しなければいけない問題を少しでも前進させるため、自分サイズに落とし込み、「自分で貢献できることは何か」と、悩みながら実行をする経験をしてもらいたい。そうすれば、いざ社会に出た時にも、「これだけのリソースがあって、こういう能力を持った仲間がいて…」と、目の前にある課題に取り組むことができるのではないでしょうか。

こうした実践的なプログラムには、こだわりがあります。しかも、これを地球市民学部の全教員が共通認識として持っている。稀有な環境が醸成できていると思っています。

山本:総合文化学部で大切にしているのは、『「好き」を「学び」に』という考え方。どの学生も、自分の「好き」を極めてもらいたいと思います。この学部には、1年次に全員が受けるユニークな授業があるんです。「総合文化スタディーズ」といって、学生は「戦国」「プリンセス」「ファッション」の中から1つのテーマを選択。それぞれのテーマをめぐり、複数の教員が領域を横断しながらオムニバス形式で講義をしていきます。

たとえば、「プリンセス・スタディーズ」では、時代を超えてプリンセスが人々を魅了する理由を掘り下げます。ディズニー・プリンセスの代表格である「シンデレラ」を題材に、映画と原作の比較をしたり、日本における「シンデレラ」の受容を学んだり、さらにはこの題材をジェンダーの視点からも考察するなど、プリンセスの魅力を多角的に探っていきます。

山本:卒業論文・卒業プレゼンテーションを見据えた専門基礎科目は、1年次から学ぶことができるのですが、2年次からは新たに専門探究科目を選択します。その数が、190科目。「日本の歴史と文化」や「ファンタジー学」「死生学」といった講義から、かるたや絵入り本なども使いながら、くずし字の解読スキルを向上させる「中級くずし字ワークショップ」や、実地調査を通じて座学では味わえない異文化を体験する「短期研修(文化史・国外)」まで、多岐にわたります。この中から自分の興味・関心にあわせて科目を選ぶ。それぞれの学生が求める「オーダーメイド」の学びを実現できるというわけです。ただ、選択肢となる科目数が非常に多いので、自分の学びたいことや身につけたい力に応じて「この中から何を履修すればいいのか」をわかりやすくまとめた、「プログラム」と呼ばれる履修モデルを用意しています。学生たちはこれを参考にして、履修を組み立てているのです。

論理的思考力や表現力を鍛える一方で、人文科学に関する広範な知識を身につけ、「学びの集大成」である卒業論文・卒業プレゼンテーションとしてまとめていきます。

総合文化学部では、古典から現代のサブカルチャーまで、あらゆる文化的事象が学びの対象。長い歴史の中で人間がつくり上げてきた文化を、さまざまな側面から学ぶことによって想像力と創造力を培い、この変化の激しい時代を生き抜く力を身につけてもらいたいですね。

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