甲南大学 中井伊都子学長 インタビュー[後編]
■エピローグ:歴史小説を読む醍醐味
--学務や研究から離れたときの時間の過ごし方、あるいは、最近読んだ本でお勧めしたい本などを教えていただけますと幸いです。
私自身の趣味の話となってしまいますが、私は歴史小説がとても好きです。最近はなかなか時間がなく、新しい本を買ったとしても「積ん読」になってしまうので、実際に買ってはいないのですが、代わりに、昔読んだ本を、時々手に取って読むようになりました。
そして、歴史小説を読んでいて、「ああ、こういうことか」と新たな気づきを得たのは、登場人物の誰に自分を仮託するかが、昔とは変わってきたことです。歴史小説には、たくさんの登場人物がいて、常に誰かに自分を仮託することで、のめり込んで読むことになりますが、私自身の立場が変わると、のめり込む人物も変わってきました。
かつては、ナンバー3やナンバー5の、支配されていたりいじめられたりしているような人物に肩入れして読んでいました。しかし、学長となった今、同じ小説を読み返してみると、意思決定をしなければならない者のつらさが分かるものですから、そのような立場に置かれた人物に肩入れして読んでしまいますね。
読む時々の自分の立場によって、違う「誰か」になれる。これが歴史小説の面白さだと思います。
--私も学部生時代に読んだドストエフスキーの小説を大人になって読み返して、共感する人物やポイントが変わっていた、という経験をしました。ちなみに、歴史小説では、どの作家の本がお好きなのですか。
宮城谷昌光(みやぎたに まさみつ:三国志など古代中国歴史小説が有名)の中国物の小説が好きです。以前から中国の歴史が大好きで愛読しています。
--本日は貴重なお話をたくさんお聞かせいただきまして、誠にありがとうございました。
甲南大学 中井 伊都子 学長
プロフィール:
京都大学法学部卒業、同大学院法学研究科社会学修士課程修了、
同大学院法学研究科博士課程中退。
国際法学者。世界法学会員、国際人権法学会員、国際法学会員。
公益財団法人世界人権問題研究センター専任研究員。
1998年より甲南大学で教鞭をとり、2020年に同学学長に就任。
論文に、「カナダにおける国際人権条約の履行」(2008年)、「国際人権規約の意義とその活用について」(2007年)、「国際人権条約における社会権の権利性」(2005年)など。
共著に、『国際法入門 逆から学ぶ』(法律文化社)、『人権保障の新たな展望』(アジア・太平洋人権情報センター)、『講義 国際組織入門』(不磨書房)、『居住福祉学と人間』(三五館)、『判例国際法』(東信堂)など。書評も多く執筆している。
著書(共著):
『国際法入門 逆から学ぶ』(法律文化社) https://amzn.asia/d/045JfTtZ
『人権保障の新たな展望』(アジア・太平洋人権情報センター) https://amzn.asia/d/08YxOLIL
『講義 国際組織入門』(不磨書房) https://amzn.asia/d/02JG5b5V
インタビュー:満渕匡彦・原田広幸(KEIアドバンス コンサルタント)
構成・記事 :山口夏奈(KEIアドバンス コンサルタント)