関西医科大学 木梨 達雄学長インタビュー[中編]
■ 教育・研究・臨床の循環を目指して
医学の発展に伴い、分野横断的な新しい科が生まれてきています。例えば、腫瘍内科です。現在はひとつの薬がひとつのがんにのみ効力を発揮するのではなく、ひとつの薬でも、共通の遺伝子変異を持っている場合は複数のがんに効くことが明らかになっています。そうすると、個々の診療科でがんを扱う意味は徐々になくなり、新たに腫瘍内科という、別の大きな分野ができてきます。そこで診療科横断的に活躍する医師が求められているのです。
そうしたニーズに対応することは、本学としても非常に重要です。研究だけでなく、医師としても、新しい領域に対応し、きちんと患者さんに還元できるような仕組みを学内に作りたいと考えています。
そして、その実現のためには国際的な枠組みで取り組むことが必要不可欠です。その意味でも、国際連携に積極的に取り組んでいます。今後はがんに限らず他の分野でも国際化を推進し、本学を舞台として、日本だけではできなかったことにどんどん挑戦していきたいです。
また、そのような環境が出来上がると、今度は学生にも良い影響を与えることができます。最新の臨床が展開されている場で、教員がどのような研究をして、どのような治療をしているのか、という実践的な動きが、リアルタイムで学生に伝わるからです。これが、附属病院を持つ大学の一番の醍醐味だと私は思います。
こうした病院と大学の循環の中で教育を行なうことにより、学生に刺激を与えられるのはもちろん、彼らに「将来自分がどの分野に進むのか」というビジョンを持ってもらえるようにもなります。これこそが私が目指す「教育・研究・臨床」の大きなサークルなのです。
--経営学で「三方善し」という言葉がありますが、まさにそのようなイメージですね。
「教育・研究・臨床」、この3つを上手く循環させて、次世代の医療人を育成することが、本学の最大のミッションです。教育だけ、研究だけ、臨床だけ、という姿勢ではいけません。多少比重の違いはあれども、大学組織全体としては、これらが生き物のように循環していることが重要なのです。そうでなければ、本学の今後の発展はあり得ないでしょう。そして当然、ここに海外連携も加わり、新たなビジョンの導入や人的な交流を行なっていきます。
国際的に開かれた大学としての土壌を形成し、教育・研究・臨床を循環させること、これが私の一番の夢と言っても過言ではありません。まずはこれを、がんという一分野でなんとかやろうとしているところですが、将来的には大学全体の気運として、それが当たり前になると良いですね。なお、この取り組みは、文部科学省による「高度医療人材養成拠点形成事業」に採択されました。
令和6年度文部科学省「高度医療人材養成拠点形成事業」に採択されました。 |関西医科大学
また、学生たちにも、「当然留学するよね」、「当然国外臨床実習目指すよね、どこの病院に行きたい?」、「自分はこれに興味があるからあの大学に行ってみたい!」といったことを、自然と考えられる人になってほしいと思います。目標があると勉強への身の入り方も変わってきますし、なんなら放っておいても、そのような学生は自ずと勉強に励むはずです。「あの国の病院で実習を受けたいから自分は英語の勉強をするんだ」、「将来の目標のために解剖の勉強をするんだ」というように、意欲が湧いてきますから。
その意味でも、教育の質を高める上で必要なのは、病院と大学の循環づくり、ならびに国際化に、組織的に取り組むこと、そして、それを学生たちにしっかりと教育で提示していくことだと私は考えます。